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柊かがみの憂鬱 Ⅱ ◆tu4bghlMIw ▽ 《……絶対に、絶対に許さない――鴇羽舞衣》 一部ボロボロになったコンクリートの海。 市街地の一角、綺麗に舗装された道路の上でかがみと舞衣達は数メートルの距離を開けて対峙していた。 「殺、した?」 舞衣の唇がまるでソレ自体が命を持っているかのようにぎこちない動作で歪む。 顔面の筋肉が硬直しているようだった。何も考えられない。全てが憎い。辛い……悲しい。 (嘘だッ……嘘だッ……嘘だッ……!!) 鬼のような、般若のような。憎しみと絶望と憤怒が混ざり合った凄まじい怒りの表出だった。 マーブル模様を描きながらに様々な感情が一つの結論を目指す。 舞衣の心はいまだ〝かがみ〟が言い放った台詞の意味を理解出来ないでいる。 「んーあぁ、殺したぜ? おっと、もしかして俺の口からじゃなくて次の放送で聞きたかったか。そいつぁ悪い事をしたなぁ」 「な、んで……」 「何で? あらあら、おかしな事聞くのね……」 白と紫の女が嘲るように言う。柊かがみの口調の次はラッド・ルッソ。 自身で否定したスイッチを切り替えるような言葉の変化を難なく〝かがみ〟はやってのける。 まるで様々な人格が一つの身体の中に同居している乖離性人格障害患者のようだ。 彼女(あるいは彼)は遊んでいるのだろうか。それとも…………? 「そりゃあ、タァカヤ君が考えちまったからに決まってんじゃねぇかよぉ!? すっかりおびえきった顔の普通の女の子につよーいつよーい宇宙人の自分が殺される訳ねぇってよ!!」 「――ッ! そ、そんな……」 瞳を見開き、唇を震わせ、拳を握り締める舞衣とは対照的にゆたかが小さな悲鳴を漏らす。 だが絶望の淵にいる所をDボゥイに救われた舞衣と違い、ゆたかがDボゥイに抱いている気持ちは別の色合いを持っている。 それは、春の空のような爽やかな憧れにも似た一途な想い。 自分に自信が持てない少女が覚えた「好き」や「愛してる」には届かない憧れのようなもの。 「……る……さない」 だが、一方で舞衣がこの世界へとやって来た状況は極めて限定的なモノだった。 彼女はほんの数刻前に何よりも大切な自分の弟を失った状態で殺し合いに参加させられていた。 加えて、それに付随する環境も最低最悪のモノだ。 尾久崎晶のチャイルド、ゲンナイが美袋命に倒された事によって鴇羽巧海は命を落とした。 そして、怒りに支配された舞衣は命を自身のチャイルドであるカグツチによって殺した――と思っている。 舞衣には救いもなく、同時に心の底から大切だと思える相手もいなかった。 いや、想う事を許された相手がいなかった、と表現するべきだろうか。 彼女が想いを寄せた相手――楯祐一は幼馴染である宗像詩帆を選んだ。 だから、舞衣は自身が楯を大切な人であると思う事に抵抗を感じていたのだ。 結果として――その想いの矛先は、相羽タカヤという一人の寡黙で不器用な男へと向けられた。 しかし、 「……何? よく、聞こえなかったんだけど。質問する時は大きな声でハッキリと発音よく。 学校で教わらなかったのかしら? そう、それでね。タカヤ君との約束があるのよ。 聞きたい? そりゃあ聞きたいわよねぇ? でも残念だけど遺言とかじゃないのよね。 そう、私とタカヤ君との約束ってはね……舞衣ちゃんとゆたかちゃんをぶっ殺してあげるって事! どう、素敵でしょ?」 目の前の少女の姿をした怪物が、彼を殺したと笑いながらに言うのだ。 ニコニコと〝かがみ〟が口元を綻ばる。 まるで学校の友人達と他愛のない話で盛り上がっている時のような和やかな表情だ。 ダンサーがステップを踏むように、コンダクターが楽隊のリズムを合わせるように。 〝かがみ〟はボコボコになったアスファルトの道路をコンコンと爪先で叩く。 放っておけば鼻唄でも歌い出してしまいそうなご機嫌具合だった。 そう〝かがみ〟はまるで辛い事など何一つ存在しないとでも言いたげに、殺戮の武勇伝を語るのだ。 (Dボゥイが死んだ? Dボゥイが殺された? なんで? こいつに? こんな奴に?) 舞衣は心の中で自問自答を繰り返していた。 こころの迷宮に足を踏み入れては、右も左も分からないような永久の闇の中で頭を抱える。 全てを、忘れてしまった訳ではない。 力がなかったから自分は守れなかった。足手纏いになる事しか出来なかった。 無力な自分が大嫌いだった。巧海を守れる力が欲しかった。 相手を倒す力ではなくて「大切な人」を守れる力。もう誰にも悲しい思いをさせたくなかったから…… だけど、あの時舞衣はラッド・ルッソを「殺すための力」が欲しいと願ってしまった。 チャイルドを呼び出す事の出来ない舞衣は極めて無力だ。 彼女のエレメントはただひたすら「守る事」に特化している。攻撃としての力の行使はほとんど行った事がない。 だから、舞衣は心の底からカグツチが現れてくれる事を願った。 カグツチは最強無比の力を持った強力なチャイルドだ。 大空を翔ける炎の翼、口から吐き出す天壌の劫火は森を焼き、山を消滅させる神如き破壊力を秘めている。 (でも、もうカグツチはいない。カグツチはやられてしまった……エレメントも出せない…… 憎い……この柊かがみの姿をしたラッド・ルッソが憎くて堪らない……) カグツチは、藤乃静留との戦いによって消滅してしまった。 姫舞闘におけるルールの一つとして、チャイルドがやられた場合、HiMEはHiMEとしての力を失ってしまう。 そして「大切な人」も緑色の光になって消えてしまうのだ。 勝ち続けるしかない。誰かを守るための力は崩壊した瞬間にその持ち主を喰らい尽くすのだから。 「……絶対に、絶対に許さない」 「ああ? 別に許して欲しくなんてねーよ。懺悔してる訳じゃねぇんだから――」 ラッドはヘラヘラと、そしてニヤニヤと。 言葉が変われば表情も変わる。 だがどちらの〝かがみ〟も周囲に強烈な不快と絶望を撒き散らす存在である事だけは同義だ。 (憎い……っ、憎いっ……!!) どんな言葉を重ねようとも舞衣には目の前の少女がラッド・ルッソにしか見えなかった。 口調もクルクルと変わるし、姿は彼女の仲間である小早川ゆたかの先輩である柊かがみのモノだ。 だが、根本的に舞衣は『本来の柊かがみ』という人間を知らない。 ラッド・ルッソと混ざり合った不純物としての〝柊かがみ〟としか顔を合わせた経験がない。 舞衣は決して聖母のような心を持った全ての罪を赦せるような人間ではなかった。 彼女は極めて普通の、どこにでもいるような女の子だ。 人間がどれだけ可能性に満ちた生き物であったとしても、十やそこらしか生きていない若者に賢者のような理性が備わっているだろうか。 柊かがみに対する思い入れが正直な話、舞衣はそれほど濃い訳ではない。 ゆたかの生き残った唯一の知り合いだ。出来るなら助けてあげたいと思う。しかし、 (私には、あの〝柊かがみ〟が――ラッド・ルッソに憑りつかれた、ただの抜け殻にしか見えない。 なんて……私は…………最低、なんだろう……) 彼女がラッド・ルッソの口調を、仕草を示すたびに、舞衣の胸はキリキリと締め付けられるのだ。 死んだはずのラッドが何故か生き返って、そしてDボゥイを殺したと――そんな穿った視点でしか、柊かがみについて考える事が出来なくて。 吹き付ける生温い風と燃えるような太陽にまでとばっちりが行きそうなくらい、舞衣の心は荒れ狂っていた。 「とりあえず、舞衣ちゃん達がまだ殺し合う気がないなら……少しだけお話でもしましょうか。 どれくらいタカヤ君がボロボロになって、無様に惨めに血だらけになって死んでいったとか――興味深いでしょ?」 「こ、いつ……っ!!!」 「おい、馬鹿! 待て不用意に飛び出すんじゃねぇ!」 「放してよスパイクっ!! こいつは、Dボゥイを……!」 限界だった。 しかし、武器も持たずに〝かがみ〟に向かって行こうとした舞衣がスパイクに後ろから羽交い絞めにされた。 必死にその手を振り払おうとしても、隻腕のはずの彼の拘束から抜け出せない。 腕一本なのにしっかりと身体をロックされてしまっている。 カグツチの名前を呼ぼうとも、エレメントを出してみようとも思わなかった。 どうせ何も起こらない事は分かっている。だけど、ジッとして見ている事なんて出来る訳がなくて…… 「おうおう、スパイクさんよぉ。舞衣ちゃんは俺と戦いたがってるんだから好きにさせた方がいいんじゃねぇか。 俺達大人だって、時にはガキの自主性を尊重するべきだしなぁ!」 「その口で大人を語るってかい。俺には好き勝手生きてるアンタが一番子供っぽく見えるがねぇ」 「……ふぅん。〝私〟の番だけに反論出来ないのが残念だけど……ま、どっちにしてもあなた達は戦って殺し合うしかないの。 だって、ね。あなた達……この前私に負けたばかりでしょ。しかも懲りずにまるで同じ面子。 流石に二度目はないわよ? 今回はそっちの白い龍もしっかり相手してあげるから……」 「……痛い所突くもんだ」 顔面を苦渋の色に染めながら、スパイクが苦し紛れに言った。 スパイク、ジン、舞衣、奈緒、そしてゆたか。 メンバーはかがみが〝かがみ〟へと変貌した時と変わっていない。 今回は「柊かがみを救う」という意志が強く存在するものの、奥の手が存在している訳ではない。 「さぁさぁ、いったい誰から俺の相手をしてくれるのかねぇ!? ああ、何なら全員一気に掛かって来てくれてもいいんだぜ。 殲滅戦、電撃戦、打撃戦、防御戦、包囲戦、突破戦、退却戦、掃討戦、撤退戦、どれだって構わねぇしよ!」 〝かがみ〟が腹の底から己の戦いに対する思いをぶちまけた。 舞衣達は彼女の放つ強烈な威圧感に気圧される。絶対的な一手などそう簡単に見つかる訳がない。 本当に〝かがみ〟を殺すつもりで戦わなければ逆にこちらがやられてしまうだろう。 しかし、それでは意味がない。柊かがみを救い、皆で帰らなくては意味がない――舞衣がそう思った時だった。 天に金色の光を放つ『影』が現れたのは。 ▽ 《痴れ者が……その程度の力で我に敵うと思ったのか?――ギルガメッシュ》 「ふむ。そこまで戦いに執着するとは呆れた戦闘狂、いや殺人狂だな」 どこかの国の国家金庫から盗み出してきた金塊から抽出したような見事なまでの黄金色の髪。 金色のフルアーマータイプの頑強な鎧。溜息が出るほど端正な容姿と、全てを射抜くような紅の瞳。 突如大空から弾丸のような速度で飛来したのは――英雄王ギルガメッシュ、その人だった。 装備したインテリジェントデバイスマッハキャリバーを用い移動用魔法、ウイングロードを行使。 帯状魔法陣を展開し、そこをカタパルトのようにして移動する戦術は音もなく敵に接近する事に何よりも優れている。 完全にギルガメッシュはかがみの虚を突き、背後から攻撃範囲へと近づく事に成功した。 「ギ、ギルガメッシュ!?」 「なっ――」 いち早くギルガメッシュの接近に気付いた奈緒が大声で彼を呼んだ。 ほぼ同時に〝かがみ〟が振り向くも時既に遅し。 それどころか、タイミングよく『顔だけを後ろに向けた』事は〝かがみ〟に更なる災禍を呼び込む事になる。 ギルガメッシュは〝かがみ〟へと突っ込みながら、無遠慮に右腕を伸ばした。 そして、ガッチリと彼女の顔面を鷲掴みにする。 五指が頬骨からこめかみ、額と彼女の皮膚に食い込む。その拘束は完璧。ソレこそ指を切断でもしない限り外れる事はない。 マッハキャリバーの高い機動性でもって〝かがみ〟へと突撃して来た彼はそのままゴツゴツとしたアスファルトに着地。 機動性をフルドライブさせて自身に更にスピードを加算する。 そして、 「テメェ、何しやが――」 「――笑いたくば、心ゆくまで笑え。その減らず口がどこまで利けるか、我が試してくれよう。 貴様の言葉に合わせてやるとすれば……そう『持久戦』という奴だ」 「や、やめなさいっ! なにするつも――ガ、ガァアアアアアアアアアアッ!!!」 〝かがみ〟の顔面を思い切り地面へと叩き付けた。 そしてマッハキャリバーを加速させる――当然、かがみの顔は道路へと押し付けたままだ。 「ガ、ガ、ア、ガガ、ガガア、ガガ、ガガ、ガア、アッガ――」 ズタズタに引き裂かれた〝かがみ〟の口から言葉にならない呻き声が漏れる。 ギルガメッシュは更にスピードを上げる。彼と〝かがみ〟が通った後に残るのは真っ赤な道。 そして擦り潰されミンチにされた肉。 皮膚が裂け、歯が砕かれ、肉に食い込み、神経は断裂し、小石が口腔に吸い込まれ嚥下、そして食道までも犯される。 濃いねずみ色の車道に紅が混じり、屠殺された家畜のように両手足も引き摺られるままに擦り切れる。 ズルズルに擦り剥けた皮膚が簾のように垂れ下がる。 白く真新しかったタキシードは待ち望んだ返り血ではなく、顔面から吐き出すように零れる血液で汚される。 ビクンビクンと彼女の身体が痙攣する。実験で電気を流される蛙のように筋肉だけが意味の無い動作を繰り返す。 (あ、あ、あ……) そんな光景を、ゆたかは顔を真っ青にしながらも脳へと強制的に流し込まれた。 眼を瞑る事など考えもしなかった。いや、恐怖のあまり身体が硬直して瞳を閉じるよう思考する事さえ出来なかったのだ。 英雄王のその蛮行自体が数秒の間に行われた行為だった。 しかし、スローモーションのように全てが再生される。見たくない筈の現実まで、全てを水晶の瞳は映してしまう。 だから、ゆたかは呆然としながら見つめる事しか出来なかった。 叫び声を上げる事も、悲惨な光景に卒倒して倒れる事も出来ない。 大切な大切な先輩が血液を噴出しながら、削られ、潰され、摩り下ろされ、壊されるのを黙って見ているだけ。 〝かがみ〟の頭部がどんどん減っていく。 舗装された道路といえど、鏡のように磨かれた完全な平面という訳ではないのだ。 当然、そこには微細な起伏があり突起がある。 そんな場所を人間が身体を、しかも顔から引き摺られたとしたら――? 生きて、いられる訳がない。 それが例え人形のように整った容姿の持ち主であったとしても、その美は完全に凌辱され破壊されるだろう。 残骸として残るのは、化物のような血と肉と骨が無様に飛び出した物言わぬ死体だけ。 そう――普通ならば。 「痴れ者が……その程度の力で我に敵うと思ったのか?」 〝かがみ〟の顔を紅葉おろしにする事に飽きたのか、ギルガメッシュが彼女の身体を勢いよく空高く放り投げた。 五、六メートルほど、天高く打ち上げられた〝かがみ〟は辺りに黒く濁った血液を撒き散らしながら落下。 重力に抗う翼を持たぬ者の宿命に逆らう事は出来ず、出来の悪い球体間接人形――ジャンク――のように両脚膝脹脛をへし折りながら大地へ叩き付けられた。 (かがみ……センパイ……私が……何も出来ないから、こんな事に……?) ▽ 《ねぇ、ひとつ質問なんだけど…………どうして今すぐにでも死なないの?――結城奈緒》 「しかし、妙だな。その低俗で熱苦しい喋り方は例の狂犬であろう。だが奴は死んだはずだ。 加えて身体は〝衝撃〟と一緒にいた小娘か? こちらはまだ放送で名前を呼ばれていないな。 が、この右手に残る妙な感触は何だ……? 押し殺した細胞がすぐさま産声をあげているようだ。 殺しても殺しても再生する、という事か。ふむ、なるほど。つまりは小娘、貴様――」 金色の手甲に付着した血液を払いながら、ギルガメシュが口元を歪める。 「――不死者、という生の地獄に縛られた畜生か?」 英雄王が確信に到った瞬間、倒れ伏していた〝かがみ〟が突然、頭を上げた。 そして蒼の瞳だけを爬虫類のようにギョロつかせながら、 「……アハ、ハハハハハハッ!! き、効いたわよ……今のは……!! 本当に……本当に! 死ぬかと……思ったわ」 「ふん、どうも削り足りなかったようだな。イマイチ加減が分からんな。我には不向きの無粋な戯れだったようだ」 冷徹な瞳でギルガメッシュは全身の骨を軋ませながら起き上がろうとする〝かがみ〟を見下ろす。 彼女の修復速度は異常だった。特に斬撃系統のダメージを多く受けていたため、顔面の傷はみるみる内に治っていく。 とはいえ、額から顎までほぼ全ての皮膚をこそぎ落されていたに近い状態だ。 特に完璧なまでに破壊された口周りなどは未だ赤い肉が腐り堕ちた果実のように充血し、屍人のような様相を見せていた。 「……いやいや、まさか君が来てくれるなんてね」 「〝王ドロボウ〟よ。これは、失態だな。あのような屍人一匹すら撃滅出来んとは」 「君が怒るのも分かるんだけどね……ま、こっちにも色々事情があって」 問い詰めるような視線に射抜かれたジンだが、ギルガメッシュに威圧される気配は微塵もない。 肩を竦め、飄々と応じるその様は同じ『王』の呼び名を持つ者として、英雄王に決して見劣りはしない。 親しげな雰囲気を保ちつつ破顔一笑。とはいえ、柊かがみの動きへの警戒は解かない。 「……ギルガメッシュ」 ギルガメッシュの名を親しげに呼ぶ少女の声――結城奈緒だ。 最後に出会った時に比べ、彼女の身体がズタボロになっている事を見咎めギルガメッシュは僅かに眉を顰めた。 だが、すぐに表情を戻すと奈緒を一瞥しながら、 「ナオよ、一つ聞いておこう。あの狗はどうした?」 「狗……ああ、ドモンの事? あいつなら一度会って、それからすぐに別れちゃったけど」 「……伝令もまともにこなせんとは。やはり、奴に王を名乗る資格はないな」 頭を押さえ、ギルガメッシュは落胆の声を漏らした。 元々低かった期待値が更に下がった格好になる。このままでは最安値も間近だ。 奈緒はそんな彼を見て小さく笑った。 そう、こういう傲岸不遜で自己中心的で他人を虫けら程度にしか思ってないのがギルガメッシュなのだ。 久しぶりに出会えた安堵か――いやいやいや、何だソレは。 何故あたしがそんなモノを金ぴかに感じなければならないのだ。 まぁ確かに、かなり頼りになる事だけは事実だけど(というか、そこを除いたら何も残らない) しかし、金ぴかの登場はあたし達にとってかなりの好機と言えるだろう。これなら…… 「とにかく! そんな事はどうでもいいからさ、手を貸してよ金ぴか。 いい? 不死の酒ってのを飲んだ柊かがみがラッドをね……なんか食べ……いや、違うな。 何ていうか、あまりにファンタジー過ぎて説明しにくいんだけど吸収しちゃったみたいなの。それで――」 「我と出会えた感動のあまり口数が増えるのは分かるが、そこまででよい。事情は察しているつもりだ」 うんうん、と頷きながらギルガメッシュが言った。が、言われた方は納得しかねる。 会っただけで感動なんてする訳がない。 それこそ動物園にパンダでも見に行った方がよっぽど胸が躍るだろう。 「いや、全然ないからソレ。まぁでも……分かってるなら話は早い、かな」 「照れずともよい。何、久しぶりに会った臣下の頼みだ。加えて我はそこそこ機嫌が良いのだ。 容易い事よ――――柊かがみを我に殺せ、と言いたいのであろう?」 自身に満ちた表情で、ギルガメッシュは奈緒に堂々と宣言した。 ――うん、訂正しよう。やっぱりこいつは全然分かっていなかった。 いや、一瞬でも「さすが金ぴか、無駄に頭の回転が速い」とか思ってしまったあたしが悪いのだ。 そもそもよくよく考えてみれば、あたし達が柊かがみを助けたいと願っている事をこのゴールデンバカが知り得る訳がない。 コイツにそういう、人間らしい慈愛の心とか他人を救いたいと思う心が存在する訳がないのは重々承知していた筈なのに。 ゆたかの大切な人を守りたい、暗黒の世界から救い出したい!なんて純粋な気持ちを理解出来るよう、頭が出来ていないのだろう。 「…………違うって。アイツの身体からラッド・ルッソを追い出して、本物の柊かがみを取り戻したいの。 小憎たらしい相手だけど、ゆたかの……大事な先輩だから」 ちょっと投げやりな感じで奈緒は自分達の目的をギルガメッシュに告げた。しかし、 「意味が分からんな。何故、そんな回りくどい道を歩まねばならんのだ? 我が進む道は全てが王道。至高へと到る覇道よ。あのような小汚い畜生は今すぐにでも塵に還した方がよいとは思わんか?」 帰ってきた解答はあまりにもギルガメッシュらしいの一言に尽きた。 奈緒は気が気でなかった。何しろ、この会話を奈緒達にかがみを救って欲しいと頼んだゆたかも聞いているのだ。 妙な方向に話が進んだら、ギルガメッシュがゆたかを恫喝し始める可能性だって捨て切れない。 「おい奈緒、ジン」 その時、傍らのスパイクが咎めるような口調で二人の名前を呼んだ。 「……何」 「あまり……聞きたくない話題かもね」 「〝コレ〟がお前らの言っていた偉そうで傲慢だけどその代わり何だって出来る英雄王サマか?」 「……残念ながら、そう」 「まぁ、一応……そうだね」 「ったく、マジかよ……」 ちょっとシュンとしながら、奈緒とジンがスパイクの問い掛けにしぶしぶと答えた。 二人とも、まさかギルガメッシュが出会って早々こんな大ボケをかましてくれるとは夢にも思っていなかったのだ。 仲間達に彼の事を美化して伝え過ぎた事を微妙に悔いる。 「待て、聞き捨てならんな。そこの雑種よ――我を愚弄する気か? 余程命が惜しくないと見える」 「いや、今の戦闘見ただけでもあんたの実力はそれなりに理解したよ。 とはいえ人間誰にでも欠点はある。俺はそういうのは大して気にしない性質でね。安心してくれ」 「――欠点、だと?」 「……っと、失言だったか」 スパイクの言葉にギルガメッシュが更に苛立ちを募らせる。 欠点、などという単語は天上天下唯我独尊完全無欠を自負する彼にとっては存在する筈のない言葉だ。 「おいおいおいっ! 俺の事を忘れてお喋りしてもらっちゃ困るねぇ、ギルちゃんよぉ!! アンタは俺の最高の餌だっつーの! あん時は殺し損ねたけどよぉ、見ろよ今はまだ俺はピンピンしてるぜぇ! 俺の中から〝ラッド・ルッソ〟だけを取り出して柊かがみを救い出す!? おぅ、やれるモンならやってみろっつー話だぜ! 絶対死なねぇと慢心しきったお前を俺はぶち殺す!!」 立ち上がった〝かがみ〟の視線は真っ直ぐギルガメッシュへと注がれる。 既に全身の再生は終了。 砕けた両足の骨も、引き摺られ擦り切れた皮膚も身体ベースである柊かがみの健康状態へと至った。 顔面の傷口もほぼ完治に近い状態と言えるだろう。 飛び散った血液すら綺麗に傷口に吸い込まれて元通りだ。所々ズタボロになったタキシードだけが唯一の爪痕と言えるかも知れない。 ……なるほど。 実際、金ぴかが現れた以上〝かがみ〟の関心がアイツに向けられるのは分かる気がする。 映画館での無茶苦茶なバトルの際、ラッド・ルッソはギルガメッシュを第一のターゲットに定めていた。 柊かがみの意思が沈み、ラッドっぽい人格がメインとなっている今〝かがみ〟が金ぴかを狙うのはある意味道理に適っている。 ラッド・ルッソの殺人の定義は『絶対に自分が死なないと思っているような生温い奴を殺して殺して殺しまくる』だ。 金ぴかは見れば分かるが、自分が死ぬとか負けるとかやられるとか微塵も思っていない。 まさに絶好の獲物という奴だろう。〝かがみ〟の中のラッドっぽい部分がそう考えるのも不思議では…… ――ん? その時、奈緒の頭の中にとある不思議な疑問が浮かび上がった。 そうだ。当たり前に考えていけば、これはどう考えても変だ。 あれ……何だ、コレ。どうなってんの……? 「貴様、何か勘違いをしているようだな」 「はぁ? まさかこの期に及んで、まだ私とは戦う気になれないとでも言うつもり?」 「だから貴様は愚図だというのだ……そろそろ、その悪趣味なごっこ遊びは止めにしたらどうだ」 尊大に、ギルガメッシュが言い放った。 「ごっこ……遊び、だと?」 「そうだ――ナオ、お前も核心に至っているはずだ。 いや、我を除けばこの場にいる人間で、その真理にたどり着ける人間は貴様しかおるまい」 ギルガメッシュが突然、奈緒に話を振った。 スパイクやゆたかなどはギルガメッシュの言葉の意図を掴めず首を傾げている。 やっぱり、金ぴかは全てを見抜いていたようだった。 理知的な推理力や理詰めの論理構成。そういう分野はギルガメッシュの専門外かもしれない。 だけど、彼の最大の武器はその『化け物じみた全てを見抜く超眼力』だ。 過程を全てすっ飛ばして結論へと至る魔法のような能力。だから、分かっている筈なのだ。 「アンタさ、誰?」 ――何が正しくて、何が歪なのかも全て。 「……つれないわね。結城奈緒ちゃん? 私とあなたが何回戦ったと思ってるのよ。 それにラッドとだってあなた、会ってるじゃない。かがみがラッドを喰う瞬間にも立ち会っていたし……」 一瞬、面食らった表情を浮かべた〝かがみ〟が笑いながら答える。 確かにあたしはかがみとラッドには会った事がある。 ぶっちゃけ、不死身の柊かがみに関して言うなら誰よりも険悪でムカつく因縁がある自負もある。 ラッドだってあの馬鹿騒ぎを何とか生き延びて再会した時は、それなりに話もした。 だけど、 「違うよ。だって――アンタはラッドでもかがみでもないでしょ?」 〝かがみ〟はそのどちらとも違う。まったく、別の……存在だ。 「……ああ、そういう事か! 確かに、混ざっちまったからなぁ! いくらメインは俺だとしても、かがみからの影響も少なからずあるのは当然――」 「だから、違うって」 〝かがみ〟を見ていると一つだけ、気になる事がある。 それは、コイツが自分自身をどういう感じで認識しているのか、って事。 〝かがみ〟は気付かない、いや、気付けないのかもしれない。 でも、コイツがラッドでもかがみでもないと、あたしは胸を張って断言出来る。 ところが、この〝かがみ〟は自身を『ラッド・ルッソ』と呼んだ。 つまり、意識していないのだろう。 忘れてしまったのだろう。ラッドにとって、一番大切だったモノを。 きっと、自分が――ラッドのおっさんであるのだと思い込もうとしているのだ。 自分が自分でなくなる感覚なんて、あたしは一度も味わった事はない。 催眠術も変な洗脳もトンと縁がないのだ。 ずっとあたしはあたし、結城奈緒として今まで生きてきた。 そりゃあ周りの人間が誰一人として信じられない時期もあった。 というか、つい最近までずっとそうだったんだけど。 だけど、もし――その自分を失ってしまったとしたら? それは人なのだろうか。不死者という死なない化物になったとしても、心は裸の人間のままだ。 少なくとも、あたしが出会った〝不死身の柊かがみ〟はそうだった。 人だからこそ夢を持つ。人だからこそ過去を捨て切れない。人だからこそ――神を目指した。 「本当に、気付いてないの?」 「だから……何をよ。私はラッドだって言ってるでしょ? あ、もしかして柊かがみの口調を使うのがおかしいって事?」 「違う。ここまで言って分からないなら……アンタは、すごく可哀想な人だよ」 「可哀想? おいおい同情してくれんのかぁ? まったく奈緒ちゃんは優しいねぇ、ヒャハハハハハハハハッ!! ついでにその辺で顔ボコボコにしてくたばってるタカヤ君に十字でも切りに行くかぁ!?」 笑い声は空虚。荒れ果てた廃墟に木霊する夕焼けのノイズみたいだ。 全然不愉快じゃない。ただただ、哀れに思うだけ。 アイツが意図してるのとはまるで違う意味で胸の奥が痛くなるだけ。 でも、本物の【ラッド・ルッソ】と【柊かがみ】を知らない人間にとって……これはきっと全く違う光景に見えている筈だ。 「ラッドッ!!」 「とと、馬鹿ジッとしてろ! お前の気持ちも分からなくはねぇがよ……」 「だったら放してよ! あいつは、あいつのせいでっ……!」 Dボゥイという名が出ただけで突如、舞衣が大声で喚き始めた。 スパイクが必死に止めるが、彼も〝かがみ〟に対して、大分業を煮やしているように奈緒には感じられた。 ……確か尾久崎晶が敗退して、アイツの弟君が死んだ時もあれくらい取り乱してたって聞いたっけ。 元々、ヒステリーっぽい気質なのだろうか。それにしても、あの錯乱っぷりは相当なモノだと思うが。 そもそも、鴇羽って楯祐一と付き合ってるんじゃなかったのか。 いつのまにか別れていた? まぁ、あの男なら分からない話でもない。 ただ……それ以外にも、幾つか気になる事はあるのだ。 アイツの態度はまるで、『まだ蝕の祭が終わっていない』ような具合なのである。 そして、それ以上に不思議なのは――アイツ、いつまでチャイルドやエレメントが出せないんだろうか、という事。 「ま、舞衣ちゃん……」 「ゆたか……? ごめん、ごめんね……! でも、あたし……」 柊かがみの中に入った〝かがみ〟の意思は、辺りに不興と厄災を撒き散らす。 個人の認識と主観の食い違い、掛け違えた歯車がぎこちない音を立てて油の切れたロボットのように躍る。 ラッドを知らない者は、〝かがみ〟を見て彼という人間をただの気違いの殺人狂だと判断するだろう。 かがみを知らない者は、〝かがみ〟を見てもイマイチこの現状に実感が持てない筈だ。 目の前のよく喋る殺人鬼のイメージが大き過ぎて、かがみは消えてしまったのではないかと疑い出す。 そしてラッドのイメージも変わっていく。 彼が何のポリシーも流儀も哲学も持たない低俗な快楽主義者に思えてくる――リライトされる。 奈緒は思う。あたし達は人間だ。神様なんかじゃない、と。 だから、そんな全てを見通すような視点で物事を考えている訳がない。 閉じられた小さな世界の中で必死にもがいている。きっと……どんな人間だってそうだ。 あたし以外の奴にはきっとこの〝かがみ〟は本当に異様な存在に見えている筈なのだ。 だけど、 「メインだとか、サブだとか、そういう問題じゃなくてさ。 アンタはそのどっちとも違うって言うか。身体は確かに柊かがみだけど、本当にそれだけ。 頭の中は所詮、劣悪なコピーよ。かがみでもない。ラッドにもなれない。ぶっちゃけ、贋作以下ね」 あたしだけは【柊かがみ】も【ラッド・ルッソ】も知っている。 だからあたしは、二人を……かがみだけではなく、ついでにラッドも救うために頑張らないといけない。 別にあのおっさんを助けたいと心から願っている訳ではない。 というか、これこそ自分の大嫌いな偽善者的行為そのものだとも思う。 だけど――あたしはアイツに借りを返さないといけないのだ。 ラッドは初めて出会った時、あたしを殺さずに見逃した。 気が変わったとか、元々気まぐれな性格だった、とか。 そういう言い訳は山のように思いつくけど、いまいち釈然としない。 あの時のあたしは完全にビビッてた。 背中を向ける事だけはしなかったけど、戦ったら確実に殺されていただろう。 ――もしかして、情けを掛けられたのかもしれない。 だから、この場で逆にあたしがラッドに同情し返してやるのだ。 柊かがみに喰われてしまったラッドを……死人のような眼をして……絶望に顔を染め上げて死んでいった彼へのせめてもの手向けとして。 「な、何ですって……!? コピー? 贋作? 笑わせてくれるわね。私は、私はラッドよ!」 「ハッ――あんたはラッドとかがみの名前に泥を塗る存在でしかないわ。 それだけじゃないわ。あたしは……倒れてて詳しい場面は見てないけど、アルベルトの眼帯、アンタしてたじゃない。 それってつまり、あのおっさんの遺志を継いだって事じゃないの。 BF団とか神になるとか……その辺、全部忘れちゃったみたいだけどさ。ねぇ――――違う?」 〝かがみ〟がここに来て初めて、狼狽の色を覗かせた。 奈緒はあの時、彼女が柊かがみから〝かがみ〟へと変化した時の光景を脳裏に浮かべる。 戦いに敗北した奈緒は暴走し始めた時には気を失っていたが、事の顛末はゆたかやスパイクから聞いていた。 ――柊かがみは眼帯が取れた瞬間、切り替わるように凶暴な人格を露にした。 おそらく、彼女の中には二つのキャラクターが存在するのだろう。 本物のラッド・ルッソがそっくりそのまま、残っている可能性もあるが、ここは考えないでおく。 そしてアレは少なくとも、ラッドではない。 奈緒もそこまでラッド・ルッソと深い交流があった訳ではないが、それでも分かるのだ。 彼は快楽に溺れたシリアルキラーなどではなかったし、己の定義に該当する相手だけを殺す――そういう人間だった。 だが、そもそも今の〝かがみ〟は非常に矛盾に満ちた存在だ。だって…… 「そう、ラッドのおっさんのポリシー……『自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる』だっけ?」 「ああ、そうだっ! 俺はそういう腑抜けた人間を見てると無性に殺したく――」 「アンタ馬鹿? だって、今のアンタって『不死者』じゃん。誰よりも自分が一番死に遠い人間だよ?」 ピシリと割れる。世界が、ぐにゃりと歪む。 「あ――ははっ! そ、それが違うのよ奈緒ちゃん。確かに私は不死の酒を飲んだけど、ちゃんと死ぬの! この空間には制限ってものがあってね。ほら見て! この首輪が私に制限を……! だから今の私は、私は……不死なんかじゃ……!」 「あのさぁ、制限って――首輪の力じゃないんだけど」 「…………え?」 信じていた全てのものがガラガラと音を立てて壊れていくような。 「でしょ、ジン」 「……まぁ正確にはギルガメッシュの考察なんだけどね。俺達にけったいな枷を嵌めてるのは――天だよ。 遥か大空を覆うドーム状の防護結界……これが能力制限の正体だね。首輪にはね……そんな力はないんだ。 現に舞衣は首輪が取れてるけれど、今でも若干身体能力が抑えられているそうだ」 「う、そ…………だろ?」 殺さなければラッドではない。 だが、自分が安全で死なない不死者になった時点でラッドはその存在理由を失う。 殺しを正当化するための方便は消え〝かがみ〟には『少しだけ死に難い身体』だけが残った。 「殺して人が少なくなればなるほど、アンタは不死者に近づいていく。じゃあ人を殺せる訳がないよね。 あたしはね、絶対に絶対に絶対に……死なないよ。ほら、殺したくなってこない? アンタの大好きな自分が死ぬなんて夢にも思ってない人間だもの! でもね、アンタはあたしを殺せない。 優勝する……なんてのも無駄っぽいよ。 あの髭面のおっさんが約束を守ってくれるって考えられるめでたい頭してんのなら止めないけど。 で、アンタが攻撃して来たら、あたしはこう判断するもの――アンタは結界を破って不死になりたいからあたしを殺そうとしてる、って」 「殺せば殺すほど……私は……死ななくなる? でも、私は……あれ? 殺さないとラッドじゃ……」 「っていうかさ――」 それは終わりのない禅問答。千日手。スリーフォールド・レピティション。 ラッド・ルッソとは己の定めたルールに乗っ取り、欲望のまま殺人を犯す存在だ。 彼ほど死に対して真摯に向かい合った人間はおらず、彼ほど死に対して敬意を払った者も早々いない。 敬虔なる教徒ですらない彼にとって、死とは何よりも身近なモノだった。 常に死と隣り合わせで生きるため、そのためだけにラッドはひたすら殺人を犯していたのだ。 だから、殺せば殺すほど自身が死から遠ざかっていく――そう認識してしまった瞬間に何もかもが破綻を来たす。 〝かがみ〟の中のラッドを模倣していた全てが終幕を迎える。 コンピュータシステムに侵入したクラッキングプログラムがネットワークに多大な損傷を与えるように。 軋み歪み、彼女の中に決定的な矛盾を発生させる。 その揺らぎこそが〝かがみ〟が作り出していた偽りの人格に終焉をもたらすのだ。 そして―― 「ねぇ、ひとつ質問なんだけど…………どうして今すぐにでも死なないの?」 奈緒のこの言葉こそが、全てを崩壊へと誘う最後のトリガー。 何かが壊れたような、そんな静寂が辺りを包み込んだ。 音抜きされた空気はまるで世界の終わりを想起させる。焼き尽くすような光が大地に降り注ぐ。 全ての人間が息を呑んで、事の成り行きを見守っていた。 ギルガメッシュもスパイクも舞衣もゆたかもジンも、まるで一切の言葉を発しようとしない。 奈緒が踏み込んだのは禁じられた領域だ。 そう、それはきっと〝かがみ〟が忘れたくて忘れたくて堪らなかった事実。 「わた、私っは……俺? お、俺が、私……? お、俺は……どうなったんだ? ラッドは……ラッド・ルッソは……? かがみ……俺が……不死者?」 それが終わりの始まりだ。 〝かがみ〟は再生した――不死者である――自身の掌を絶望に染まった眼で見つめる。 ガクガクと彼女の両膝が砕けたように震え始める。 額や首筋には大粒の汗を浮かべ、かがみとラッドの言葉がついに混ざり始める。 幾つもの精神が融合した彼女の身体は非常に不安定だ。 確かに、柊かがみの心は儚く脆弱な年頃の少女のソレだった。 だが、彼女が喰った男の精神はどうだったと言うのだろう。 彼は強いのか。どのような状況にあっても自分自身の流儀を貫き通せる人間なのか。 そしてもしも彼が、その『流儀』を手放したとしたら、それは彼であると言えるのだろうか――? 時系列順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅰ Next 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 投下順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅰ Next 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ 柊かがみ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ 小早川ゆたか 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ 鴇羽舞衣 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ スパイク・スピーゲル 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ ジン 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ 結城奈緒 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅰ ギルガメッシュ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ
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柊かがみの憂鬱 Ⅲ ◆tu4bghlMIw ▽ 《俺には俺を殺す資格が……ねぇ――ラッド・ルッソ》 ――ノイズが走る。それは再生と不死を巡る一つの挿話。 『ありえねぇ……ありえねぇよ……おいおい、どーすんだよ、コレは。 俺が死なない人間になってどうするんだよ。 これから俺は死ぬことができる人間に対しどう振舞えばいんだよ。 死なないっつー、人間でもない俺が、死ぬことなんて考えてないユルい人間にどう接すればいいんだよ?』 ラッドの瞳から緑色の螺旋が消えていく。 まるで眠るように、朽ちゆく花のように、沈んでいく月のように。 全ては冥府の世界へと吸い込まれて行く。 『てめーが死なないのに、お前は死ぬことを考えてないって怒るのは筋違いじゃねぇのか? つか、俺が最も嫌悪すべき死ぬことなんか考えてないヤツになっちまったんなら、 まず俺は俺を殺さなきゃならねーんじゃないのか? でもでも、俺死なねーじゃん。自分で自分を殺せねーじゃんかよ。 どこまで、どこまで、どこまで、どこまでいっても自分を殺し続けるのか? いや、これもねーよ。俺には俺を殺す資格が……ねぇ』 己が己である意味を失った男はこの瞬間―― 『……だったらよ。割り切って死神でもなってみるか? 自分は絶対死なねーんだけど、人間に死を齎す神様によ――って、冗談じゃねぇ! 俺は……俺は……俺は……俺は――……』 心を、失った。 ▽ 《だから、聞いてんじゃん。鴇羽、あんたは誰のために戦って、誰を守りたいの? 誰が……大切なの?――結城奈緒》 「ガ、ガァァァァアアアアアアアアア!!! 私は、私は……!」 「ッ――!? な……!」 〝かがみ〟がまるで獣のような咆哮と共に身体を大きく捩った。 誰もが身構えるが、そのまま攻撃へと移る者はいない。 〝かがみ〟と他の人間の距離は数メートル。 唯一奈緒だけが突出した形になっているが、それでも近接攻撃が届く間合いではない。 (な……ど、どういう事……!?) 舞衣はその事態の急変にまるで付いていけなくなっていた。 何となく、ではあるが舞衣には奈緒の説得が切っ掛けで柊かがみが帰って来るのではないか、という淡い期待があった。 今すぐにでも歪んで表現されたラッド・ルッソの幻影を振り切って、かがみが顔を出すのではないかと思っていたのだ。 それは〝かがみ〟の中のラッドを強く憎む、舞衣であっても同じ事だ。 (暴走……ラッドが……いや、奈緒ちゃんの言葉通りだとしたら、ラッドの偽者……!?) 舞衣は身動ぎ一つ出来ずに思わず後ずさった。 不死者の再生力と覚醒した螺旋力、そして圧倒的な物量に支えられた王の財宝による攻撃。 エレメントもチャイルドも出せず、バリアジャケットの飛行能力さえ引き出せない彼女は非常に弱気になっていた。 自分も戦って他の人を守りたい。守れるだけの力を手に入れた筈なのに……! 「いやぁあああああああああああああああああっ!!」 雄たけびを上げながら〝かがみ〟が懐から黄金の都へと至る鍵剣を取り出し大きく息を吸い込んだ。 それは力の氾濫。心が処理できる限界を迎えたゆえの暴走行為。 溢れ出した殺意は【柊かがみ】という器に収めておくには無理がある。 もはや〝かがみ〟という第三人格ですらない。今、柊かがみの肉体を動かしているモノは―― 「殺す……殺す……殺す……殺す……殺す……」 純粋な――殺意の塊だけ。 〝かがみ〟は眼を血走らせながら肩で息をする。 呼吸は荒く、まるで餌を抜かれた野獣のようだった。漂う血液の匂いが彼女の狂気を際立たせる。 もはや、ラッドやかがみの意思といった領域を完全に越えてしまっている。 虚ろな殺人人形が一体、抗えない殺人衝動に身を焦がすだけ。 「……はぁっ! はぁっ……!」 「愚図めが――仮初の精神が耐え切れずに破綻を来たしたか」 「……ギルガメッシュ、お前は初めから見抜いていたのか」 眉を顰めながらスパイクがギルガメッシュに訊いた。 涎を垂らし、服の上から苦しげに心臓を押さえる〝かがみ〟を冷たい視線で見下ろしながらギルガメッシュが答える。 「当たり前だ。一つの身体に複数の心? 馬鹿な、あの酒にそんな力は存在せんのだよ。 アレの効果は一片の容赦もない完全な咀嚼、噛み砕き相手の全てを喰い尽くす餓鬼の如き衝動だ。 確かに知識や記憶と一緒に、人格も主人格に引き摺られてはいくかもしれん。 だが、せいぜい影響を及ぼす程度よ。喰われた不死者が喰った不死者に成り代わるなど有り得る訳がない。 が――なんの因果だろうな。結果として生まれしまったのが、あの畜生だ。 『喰われたラッド・ルッソを騙る』人格とでも言うべきか。 そしてこれは、表層的な部分でしか模倣出来ていなかった故の崩壊だ。故に、この結末は道理であろうな」 自身の持つ超眼力によってギルガメッシュは既に〝かがみ〟の中の歪な構造を看破していた。 加えて彼は出来損ないではあるが、不死の酒の実物を一度じっくりと鑑定している。 この経験によって今回の考察は更に強固なモノとして実証性を保持しているのだ。 「殺す……ひら、け――――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」 少女の背後で何か〝扉〟のようなものが開いた。 空間と空間が、四次元と三次元――異なる境界を有する次元が連結する。 ――王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)の発動。 よって、周囲に一斉に彼女が所持する蔵に貯蔵された武器が展開。 今回は先程の第一射のように瓦礫や鉄塊といったガラクタだけではない。 〝かがみ〟の頭上、そこに燦然と煌く一振りの剣――円卓の騎士を統べる騎士王の愛剣・エクスカリバー。 「かがみ先輩ッ! 頑張ってください! 悪い心なんかに負けちゃダメです!」 ゆたかが〝かがみ〟に向けて言葉を投げ掛ける。 既に〝かがみ〟はデイパックの中身を射出する準備を整えている。 これはとても勇気のいる行為だ、舞衣は心の中で思う。 今にも折れてしまいそうな心の闇を必死で振り払って、こうしてゆたかは言葉を紡いでいるのだ。 生き残った唯一の先輩であるかがみを救いたいという純粋な心。 両目に涙を溜めたゆたかは腹の底から、大好きな先輩の名前を叫んだ。 「うるさい……だ、黙れぇええっ!」 「きゃっ――」 だが――その思いは儚くも踏みにじられる。 〝かがみ〟の背後の空間に発動したゲート・オブ・バビロンから、拳大のコンクリート片がゆたかに向けて射出されたのだ。 風を切り、直進したその塊は見事なまでにゆたかへと直撃する。 「あ…………っ!」 「ゆたかっ!」 ゴッ、という鈍い音が昼時の市街地に響いた。 瞬時にゆたかは腕を顔の前で重ね合わせ、直撃だけは避けた。 とはいえ、ほぼ顔面を目掛けて飛んで来たコンクリート片の破壊力は強大だ。 重さ数キロは有りそうな硬材と宝具による爆発的な加速。 それはちっぽけな少女を吹き飛ばすには十分過ぎるものだった。 「死ねっ、死ね死ねっ――!」 そして更なる追い討ち――エクスカリバーの直接射出がゆたかを襲う。 一直線、地面に倒れたゆたかに向けて容赦のない一撃が彼女の命の灯を奪わんと撃ち出される。 「おいで、ジュリアッ!!」 「く――!」 が、ここで奈緒がエクスカリバーの突撃を遮るようにゆたかの前面に女郎蜘蛛のチャイルド・ジュリアを呼び出す。 そう、ゆたかを庇うための盾、としてだ。 ジュリアの本体――蜘蛛の身体の部分をエクスカリバーが貫通。 深々とジュリアのエメラルドグリーンの皮膚を突き破り、紫色の体液が零れ落ちる。 若干照準がずれたためか、エクスカリバーの一撃はゆたかへとは至らない。 ソレは再度〝かがみ〟の蔵の中へと回収される。 そして―― 「くっ――が…………ッ!」 再度、発射されたエクスカリバーが奈緒のわき腹を貫いた。 奈緒の口から紅色の液体が洪水のように溢れる。 内臓が貫通されたのだ。口からの出血は勿論、激しい。 心臓や頭部など、明らかな急所を避けたのは僥倖と言えるだろうか。 だがポッカリとまるで風穴のように数センチ大の『空白』が彼女の身体に穿たれる。 ポタポタと零れる血液は、白と灰色の世界に新たな彩を加える。 音は〝かがみ〟がうわ言のように繰り返す「殺す」という言葉だけ。 「っ…………やば」 ぐらり、と傾き地面へと倒れ掛けた所を奈緒はギリギリで立て直す。 両の脚でアスファルトの大地を強く踏みしめるも出血はやまない。 腹に空いた大穴はまるで大蛇に食い千切られたように欠損してしまった。 「ああああああああああああああっ!」 「……無限の武器庫が相手か。残弾のねぇこっちにとっちゃあ……これ以上の敵はねぇな」 「あの弾幕を潜って彼女を仕留めるのは骨が折れるね。接近戦には持ち込めない」 咆哮と共に、黄金の都へと至る全砲門をフルバレル。ガトリングガンのような礫弾の嵐が打ち出される。 苦し紛れにスパイクがジェリコ941による威嚇射撃を試みるも不発。 外部からのヘッドショットを防ぐために〝かがみ〟は王の財宝を彼女の前面にも展開し、攻撃を防ぐ盾として利用しているのだ。 加えてスパイクの銃にほとんど弾が残っていない事も問題だ。 彼の手に残っているのは接近しなければ殆ど効果の無いデリンジャーと虎の子のナイブズの銃のみ。 ジンも手にした夜刀神で〝かがみ〟の礫弾を防ぐが、攻撃へと移る事は出来ないでいた。 「殺す……殺す……!」 「チッ――ちょこまかと……ッ!! ――ッ、ナオ!」 唯一、この礫の嵐に影響を受けずに攻撃出来るギルガメッシュも効果的な攻めへと転じる事が出来ずにいた。 なぜなら――今回、彼の周囲には人間が多過ぎるのである。 〝かがみ〟はギルガメッシュが最も危険な戦力である事を悟っているのか、見事に移動を繰り返し一箇所に留まらないよう心掛けている。 彼が持つ絶対無比の宝具である乖離剣エアの最大の弱点は、その化け物じみた攻撃範囲にある。 対城宝具の域を超え、対界宝具として位置づけられるエアを対人戦に、しかも集団戦闘で用いるのは非常に制約が多い。 殲滅戦ではないこの一対他という特徴的な構図が彼を縛り付けていたのだ。 ギルガメッシュにとってはかがみの安否や目の前の小娘程度巻き込んでも問題はないとはいえ、近くに奈緒とジンがいる以上、思うように動く事が出来ない。 「ゆたかっ、大丈夫!?」 「ま、舞衣ちゃん……わ、私は……大丈夫です。そ、それよりかがみ先輩を……」 「何言ってんのよ、酷い怪我……」 「鴇羽! あんたはゆたか見ててっ!」 「でも、奈緒ちゃんの怪我の方が……! 血だってこんな……!」 「うっさいっつーの! ゆたかは頭打ってんだから動かせないでしょうが。少しは考えろ、ボケ!」 奈緒がエレメントの鋼線を張り巡らせながら、ゆたか達の前に陣取る。 倒れそうな身体を鉄の意志で叱責しながら、真っ赤な血液を垂れ流しながら。 倒れたゆたかに思わず駆け寄った舞衣だが、彼女の怪我が思った以上に軽微でホッと胸を撫で下ろす。 舞衣は不安そうな瞳で、地面に倒れたゆたかを見た。一番重症なのが左腕。下手をしたら骨が折れているかもしれない。 それに軽い鼻血と地面に倒れた際の若干の脳震盪……大丈夫、致命傷ではない。 だが、それ以上に問題なのは奈緒の傷だ。 (緑色の光……これは……チャイルドが……!) 舞衣は思わず息を呑んだ。キラキラとした粒のような緑黄の光子がジュリアの体躯から立ち昇る。 それは、チャイルドが消え去る時の輝きだ。 放たれた二撃のエクスカリバーはジュリアと奈緒、二人に誤魔化しようのない傷を負わせていた。 (奈緒ちゃんの大切な人が……消えてしまう?) 雨……そして、涙。 思い出す――自分の大切な人が消えていったあの光景を。 慟哭。憤怒。絶望。 どんな言葉でも言い表す事の出来ない悲しみの螺旋が舞衣の胸で顔を覗かせる。 (じゃあ――私の大切な人は誰?) また、そんなどうでもいい事を考えてしまう。 舞衣のチャイルドは、カグツチは藤乃静留の清姫とほぼ相打ちに近い形で最期を遂げた。 (……Dボゥイ) 空っぽのまま、この場所へと放り込まれた舞衣は最初HiMEとしての力を使う事が出来なかった。 だから、半ば意識がない状態でも――自分がカグツチを呼び出せた事はとても嬉しい事だった。 自分にも大切な人が、人間らしい心があるのだと実感出来た。だけど、今は―― 「鴇羽ぁっ!!!」 「な、奈緒ちゃん……!?」 舞衣の心が沈みかけたその瞬間、奈緒が大声で彼女の名前を呼んだ。 俯きかけていた視線が目の前で荒い息を吐く奈緒へと向けられる。 「いつまでウジウジしてんのよ、アンタは! っていうか……仮にもHiMEなら、アンタも……戦えっつーの」 「で、でも……もう私にHiMEの力は……カグツチは会長さんにやられて……」 肩で息をしながら、奈緒が思い切り舞衣を叱りつけた。 年下の子にここまで言われれば普通は反骨心や不快感などが湧き上がりそうなものだが、意気消沈した舞衣にはそんな感情は芽生えなかった。 そう、チャイルドの消滅――それはすなわちHiMEの《蝕の祭》における敗退を意味する。 「やっぱり……知らないんだ……鴇羽、アンタはまだHiMEだよ。カグツチが出せないのはアンタのせいなんだよ」 「えっ――!?」 それは、衝撃的な一言だった。 チャイルドが消滅すれば、その本人はHiMEとしての力を失う。その事実に偽りは…… 「鴇羽……あんたの、大切な人って誰?」 「私の、大切な人?」 「玖我が死んでも、藤乃は死ななかった。これがどういう事だか分かる?」 「……なつき?」 確かに、玖我なつきと藤乃静留の死亡が知らされたタイミングにはかなりの間があった。 なつきの大切な人が静留である事を舞衣は知らなかったが、確かにソレは妙な話だ。 「大切な人とチャイルド……この二つは表と裏だよ。どっちかが欠けていたんじゃ、破綻を来たすって事。 チャイルドが消滅したからあたし達はHiMEでなくなるんじゃないの。 大切な人が消えて……その想いが『柱』として取り込まれるからあたし達はHiMEとしての資格を失うの。 あんたはまだHiMEだよ。痣がどうなっているかは分からないけど、ソレはあんたの『心』が死んでるって事」 「そ、それじゃあ――」 まだ、自分はHiMEだった? 私の胸元にHiMEの痣がまだ残っていた? ……ダメだ、覚えていない。 だけど、《蝕の祭》の範囲から外れたこの世界では様々な事に制限が掛かっている。 奈緒の言葉に間違いがあるようには思えない。 「だから、聞いてんじゃん。鴇羽、あんたは誰のために戦って、誰を守りたいの? 誰が……大切なの?」 ――私は、まだ戦える? ▽ 《私には、まだ守らなければならない人達がいる――鴇羽舞衣》 辛い事がたくさん、たくさんあった。 光と共に消えていった大切な弟。 この手で殺してしまった儚い命。 死んでしまった大切な友達。 心を蝕むような憎しみの連鎖。 そして――再会する事も出来ずに、この世を去った大切な人。 舞衣は自分が何をすればいいのか、ずっとずっと分からなかった。 求めた時に、力は彼女に応えてはくれなかった。 そして求めざる時に、その衝動は幾つもの殺意となって関係ない人達に災いをもたらした。 どれだけ後悔しても、どれだけ涙を流しても、失ってしまったものは戻らない。 だから舞衣は全てを背負う覚悟を固めた。 どんな辛い運命だって絶対に乗り越えて見せると胸を張って啖呵を切った。 そんな決意を揺るがしたのは一人の男の人――Dボゥイ、相羽タカヤ。 大好きな人、絶望に染まった自分を支えてくれた本当に、大切な人だ。 でも、もう彼はいない。彼は舞衣の前から姿を消してしまった。 彼の横顔も笑顔も声も、何一つだって舞衣はもう感じる事は出来ない。 これで、何もかもが終わってしまった? ……違う! 私には、まだ守らなければならない人達がいる。 私はHiMEだ。HiMEには力がある。 か弱い人達を守るための掛け替えのない力が……! 悪魔の運命を切り裂くための力が、求めて止まなかった強い力が――今の鴇羽舞衣にはあるんだ。 「お願い……ッ!! カグツチィィイイイイイイイイイ!!!」 それは天にまで届くような猛き叫び。 舞衣の身体からエメラルドの螺旋が放たれる。 血染めの赤ではなく、天壌の白。 世界を創生へと導き、終焉を打ち砕く最強のチャイルド――カグツチ。 叩け――天上の神が眠る天の岩戸を。 願え――星詠みの舞を。 謳え――水晶の祝詞を。 乗り越えよ――涙の運命を。 そして、目覚めよ――灼熱の舞姫。 舞うがいい、竜の巫女よ。 全てを包み込む劫火の翼で――神如き、炎の舞を。 時系列順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅱ Next 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 投下順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅱ Next 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 柊かがみ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 小早川ゆたか 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 鴇羽舞衣 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ スパイク・スピーゲル 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ ジン 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 結城奈緒 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ ギルガメッシュ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅳ
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No.047 柊かがみ 夏服ver. (Kagami Hiiragi Summer Uniform Ver.) 「じ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」「5秒以内なら菌がつかないんだってヴァ!」 情報 作品名 らき☆すた 価格 2,500円(税込) 発売日 2010年10月31日 商品全高 約135mm 付属品 表情:笑顔、怒り顔、のっぺら顔(付属シールで表情を作る) 手首:×10 共通付属品(スタンド、スタンド用アーム、収納袋) その他:日下部みさお頭部パーツ 写真 キャラクター概要 柊かがみ 柊かがみ 冬服ver.を参照。 日下部みさお 高校時代の柊かがみのクラスメイトの一人。 親友の峰岸あやのともども中学2年から高校3年までずっと同じクラスという腐れ縁だが、 高校2年までまともに認識されていなかった(これを受け「まるで背景だ」と愚痴っていた)。 前向きではあるもののいい加減でぐうたらな面があり、かがみには泉こなたと同じタイプとして認識されている。 陵桜学園卒業後はこなたと同じ大学に通学している。 商品解説 良い点 悪い点 注意点・不具合情報 関連商品 泉こなた 冬服ver. 泉こなた 夏服ver. 泉こなた コスプレver. 柊かがみ 冬服ver. 柊かがみ コスプレver. 柊つかさ 冬服ver. 柊つかさ 夏服ver. 高良みゆき 冬服ver. 高良みゆき 夏服ver. コメント 戦いの神 -- 名無しさん (2010-06-15 12 46 09) 名前 コメント
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1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 02 41.48 ID A7JUHfIr0 「忘れる」ということ。 それは時に非常にうっとうしい、脳の機能のひとつである。 大切な約束や予定をうっかり忘れたり、学生なら試験勉強などしていると、 この「忘れる」という機能がなければいいのに、と思えてくる。 しかし、「忘れる」ことは、人間が生きていくために必要である。 人生には幾多の辛いこと、悲しいことがある。 その記憶は、時の風にさらされて徐々に乾き、輪郭を崩し、抽象される。 あらゆる辛い記憶が風化されずに残れば・・・人は生きてはいけないだろう。 そう、時が経てば傷が癒えるように、心の傷も癒えていく。 それが「忘れる」ということの、ひとつの側面だと思う。 いま通学電車の中で、忘れてしまいたい辛い思い出に触れている少女がいる。 かがみん「また痴漢・・・どうしたらいいの」 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 08 51.84 ID A7JUHfIr0 俺は今朝、柊かがみに痴漢する夢を見た。 つかさとこなたといっしょに登校するかがみんの後ろにつけてお尻を触った。 調子に乗って責めすぎて、指を入れようとして、かがみんが悲鳴を上げた。 その断末魔で目が覚めた。俺は汗だくになっていた。 辛い思い出である。思い出そのままの夢である。 それから数日後、駅でかがみんを見て、俺は取り返しのつかないことをしたと思った。 蒼白な表情・・・もう二度とかがみんには痴漢できないかもしれない。 いや、それどころか、俺は一人の少女の人生を狂わせてしまったかもしれない・・・ それ以来、俺は駅に行くたびにひそかにかがみんのことを気にかけていた。 大好きな妹や友達に支えられて、その顔に少しずつ元気が戻ってはきたが・・・ 俺は朝から鬱蒼とした気持ちで駅に向かった。 そして今、俺が見ているのは・・・改札をひとりで抜けるかがみんである。 ひとりでホームに向かうかがみんの表情や仕草は落ち着いている。 時間はかかったが・・・かがみんは戻ってきた。 だから俺は決めた。今日は、お前に痴漢しよう。 やり直しだ。あの日あの時止まってしまった俺たちの時計。 止まったままでは、永遠に次に踏み出せない。 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 14 30.84 ID A7JUHfIr0 俺はかがみんに続いてホームに向かい、その後ろに立った。 お前を失った俺は、数々の姫に痴漢して腕を鍛えてきた。 たくさんのお尻を触ってきた。 時には恐怖に、時には快感に埋もれながら・・・それでも俺はお前を忘れなかった。 お前を追い詰めすぎた反省。それは俺を謙虚にしてくれた。 かがみんのお尻を眺める。俺の指はかがみんのお尻の感触を思い出す。 忘れようとも忘れようのないお尻だ。 電車が到着する。 俺はかがみんに体を密着させて車内に押し込んだ。 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 19 01.08 ID A7JUHfIr0 左右で結ばれた綺麗な髪の毛がふわりと揺れる。 さすがに敏感なことだ。迫る危機を察知したらしい。 かがみんは俺から離れようと、人をかき分けて車内へ入っていく。 俺は離れないようそれを追う。かがみんは逃げて・・・そして追い詰められた。 かがみんは結果的に電車の角に誘導されてしまったのだ。 混雑しやすい扉の近くで、最も死角を作りやすい、まさに痴漢のホットコーナー。 さらに後ろの乗客に押されて、俺の体はかがみんに密着していく。 つかさもこなたもいない時に限ってこの状況・・・ 舞台は整った。あとはやり放題。俺とかがみん、一対一の真剣勝負だ。 扉が閉まり、電車が大きく揺れて発車する。 俺はまだ手を出していない。 しかし、俺の胸に当たるかがみんの肩は細かく震えていた。 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 23 33.31 ID A7JUHfIr0 どうだろう、この怖がり方。 俺はまだ触っていない。俺が痴漢であるという確証もまだないはずだ。 さっきまで落ち着いていたかがみんが、これだけでガタガタ震えている。 かがみんは痴漢の恐怖を克服したわけではない。 ただ、その記憶を押し込め、幾重にも蓋をして鍵をかけて見ないようにしているだけだ。 そして今、かがみんの心の深い部分で、その記憶が蠢動している。 俺は少し気の毒になった。 かわいそうに、よほど前の痴漢が怖かったんだろう。 安心しなよ、今すぐ俺が救ってやるから。 トラウマってのは同じ恐怖によって克服されるらしいぜ。 まあ漫画の知識だから責任は取れないけどな。 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 27 32.17 ID A7JUHfIr0 俺の指がかがみんのスカートに触れる。さて一気に仕掛けるか、ゆっくり責めるか。 スカートをつまんで弄びながら考える。 いきなりは危険だ。かがみんは痴漢に過敏になっている。 ゆっくり慣らしていかないと同じ轍を踏むことになってしまう。。 俺はまずスカートの上からかがみんのお尻に手を当てていく。 両手で、左右のケツの盛り上がりを包んでフィットさせる。 スカートの上からのソフトタッチでも、お尻の柔らか味が感じられる。 そして、その可愛いお尻は・・・やはり、細かく震えていた。 かがみんはきっとあの時のことを思い出している。 俺もつられて思い出す・・・ 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 31 22.87 ID A7JUHfIr0 その大きな手は、やがて私のスカートの中に侵入してきました。 私は必死に我慢しました。こなたや妹に余計な心配をかけたくなかったし、 なんとなく恥ずかしかったからです。 そうしていると、痴漢は私のパンティをお尻に食い込ませてきました。 べたべたした手が素肌に触れてすごく気持ち悪かったですし、 お尻の谷間に感じる痛みにも耐えなければなりませんでした。 それでも、痴漢に遭うのは初めてではありませんでしたし、 少しの辛抱だと思って我慢しました。 電車が着いてやっと開放されると思ったとき、私の耳元に生ぬるい息がかかりました。 小声ではありましたが、「可愛いよ、かがみん」と言ったと思います。 それで、その指がパンティの隙間から私の股間に・・・ 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 35 18.90 ID A7JUHfIr0 痛みと嫌悪感に耐え切れず、私は叫んでしまいました。 全身の力が抜けて、その場に座り込んでしまいました。 涙が止まらなくて、自分の体が自分じゃないみたいでした。 こんなことになるのなら、早くこなた達に助けを求めればよかったと 今でも後悔しています。 それからホームで、こなたとつかさが、知らない女の人と何か話し合っていました。 その人も痴漢に遭っていたらしいのですが、詳しくは分かりません。 警察に行こうと言ってくれましたが、私は断りました。 お父さんにも、お母さんにも相談できなくて・・・ 翌日は怖くて学校を休みました。痴漢に監視されているような気がしました。 こなたもつかさも私を気遣ってくれました。それが本当に嬉しかったです。 二人のおかげで、私は徐々に痴漢のことを忘れられました。 なのに・・・ 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 39 33.35 ID A7JUHfIr0 耳元で聞こえたのは、お姉ちゃんの声でした。 でも、私はそれがお姉ちゃんの声だとすぐには分かりませんでした。 引き裂くようなというか、引きちぎるようなというか・・・ 今でも耳の奥に残っています。 びっくりして見ると、おねえちゃんが座り込んで泣いていました。 顔を覗きこむとなんだかうつろな表情で、色を失った目からとめどなく涙が溢れていました。 私はびっくりして、どうしていいか分かりませんでした。 あの光景は、たぶん一生忘れられないと思います。 隣に乗っていた女の人が助けてくれて、お姉ちゃんを電車から降ろしました。 その人が言うには、電車に痴漢がいて、それにやられたんじゃないかということでした。 でも、私も動揺してしまって、あまりその人の話を聞くことはできませんでした。 ただ、お姉ちゃんの見たこともない姿が悲しくて、胸が詰まる感じで息苦しかったです。 お姉ちゃんの手を握ると、その手は弱々しく震えてしました。 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 43 36.63 ID A7JUHfIr0 本当に腹が立って、許せない気持ちでした。 だって、かがみんは何も悪いことをしたわけじゃないのに。 ガタガタ震えて、しくしく泣いているかがみんを見ていると、本当に悔しかったです。 近くにいたのに気づかなかった自分にも腹が立ちました。 もう少し注意していたら、あんなかがみんを見なくてすんだかもしれないのに。 しかも、あのかがみんがあんな状態になるなんて。 どんなひどいことをされていたのか・・・ちょっと想像して、すぐにやめました。 それからは、痴漢モノのエロゲーにも嫌悪感を感じるようになりました。 でも、最近はかがみんもすっかり元気になってくれました。 大好きな友達が元気で笑っているのが、やっぱり私にも一番幸せです。 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 48 07.84 ID A7JUHfIr0 俺の心の走馬灯がくるくると回る。 はじめてかがみんに痴漢したときのこと。・・・懐かしいなあ。 ほんのちょっと前のことが、すごく昔の話みたいだ。 そうそう、俺が能登麻美子に痴漢してたんだよな。それをお前が見てしまったんだ。 で、いっしょに痴漢してやったんだよ。 「能登」と「加賀みん」なんてできすぎだと思ったんだ。・・・ それから・・・やりすぎて泣かせたこと。 つかさとこなたに支えられるように登校するかがみんの蒼白な表情。 そして少しずつ自分を取り戻し、明るく笑うようになったかがみん。 スカートをめくって生パンごしにお尻を掌握する。 必死にお尻を閉じて震えている。 その緊張がお尻に緊張感のある張りを与えて、プリプリと俺の指を押し返した。 俺は手を止めない。右手を動かして、人差し指をお尻の谷間に当てる。 どんなに力を入れても、柔らかい尻肉を硬直させることはできない。 尻たぶの隙間から、パンティごとかがみんのお尻の谷間に侵入していく。 じんわりと熱い感覚。かがみんはもう汗だくになっている。 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 52 37.76 ID A7JUHfIr0 あの日と同じように責めよう。となれば、Tバック状にして生尻堪能だ。 俺はおもむろにパンティのすそに指をかけた。 かがみんがびくっと震えて、さらに体を硬直させる。体の震えがさらに大きくなる。 びっくりさせるのは得策ではない。 俺はゆっくりと優しく指を持ち上げ、右手の指でそのパンティを綺麗にお尻の谷間に押し込んだ。 その谷間は汗でぬるぬるとしていて、それが潤滑剤になって俺の指をぬるりと迎え入れた。 左手をかがみんの左ケツにフィットさせる。汗ばんだお尻がふるふると震えている。 そのきめの細かいすべすべしたお尻が汗に濡れて、俺の指を吸い付ける。 プリプリとした張りが心地よい。 俺は少し指に力を入れて、尻たぶの肉を押し込んでやった。 かがみんの尻たぶはふにふにとして俺の指を受け容れた。 久しぶりに触るが、やはり・・・いい尻だ。 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 00 57 34.74 ID A7JUHfIr0 俺の右手の指先を左右からかがみんのお尻の肉壁が刺激する。 そして左手のほうは少しずつ力を強くして、かがみんの生尻を揉みしだいていった。 とはいえ、乱暴になりすぎないよう、優しく慈しむようにである。 かがみんは相変わらずガタガタと震えながら、抵抗はない。 恐怖で抵抗すらできない様子だ。 硬直したお尻は、少しずつ解れてきたが、震えは止まらない。 ぬるぬるした谷間にさらに汗が滲む。 俺はかがみんのお尻を両手でむしゃぶるように堪能した。 さて、電車が減速し始めた。 そうそう、「同じ恐怖でトラウマを克服」するんだったよな・・・ かがみんがあんな状態になったのは俺のせいだ。だから俺が責任をとって克服させる。 俺は右手を少しずつ下に下ろし、股間を目指した。 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 01 01 51.70 ID A7JUHfIr0 解れてきたかがみんのお尻がまた硬直する。きゅっと谷間を閉じて俺の指を拒もうとする。 俺はさらに左手でぐいぐいとお尻を揉んでやる。 小指と薬指をお尻の谷間にかけて、それを開くようにして揉む。 そして俺の右手の中指は股間に到達した。 さてさて、思い出そうよ。あの楽しい記憶をさ。 俺は左手の指先を立てて、こちょこちょとお尻をくすぐってやる。 責めの趣向が変わったことで、かがみんはぞくぞくと震え、一瞬脱力した。 そのチャンスを逃さず、俺の指はかがみんのパンティの隙間に入り込む。 俺の指は、まずはざらざらした感触を捕らえた。陰毛である。 さらに指を押し込んで、ついに俺の指は割れ目に到達した。 その入口はひくひくと震え、怯えているようでも誘っているようでもある。 あの日、あの時と同じだ・・・ 俺はガタガタと震えるかがみんの右耳にふっと息を吹きかけてやった。 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 01 05 50.99 ID A7JUHfIr0 その瞬間、かがみんは一気に脱力した。 俺に体をもたせかけるようにして、全身の力が抜けた。 ちょっと怖がらせすぎたか。 あの時と同じように、そこに指が突き立てられるとでも思ったんだろう。 安心しなよ。俺もせっかく帰ってきた大事な姫をまた失うような真似はしないよ。 かがみんのお尻は脱力していて、俺の右手が柔らかい尻たぶが優しく包んでいる。 左手のほうも、ぐいぐいと揉んでやっても反応しない。 ただ尻肉自体の張りだけがプリプリと俺の指を押し返した。 俺はひくひくと震えるその割れ目を、やさしく撫でるようにすりすりとなぞってやった。 ゆっくりだ、ゆっくりでいいんだからね。 いずれはその口で俺の指を咥えてもらいたいけど、焦らなくていいんだ。 ゆっくり慣れていこう。俺も協力するからさ・・・ 優しく割れ目をなぞってやる。 指の腹が少しだけそれを開き、熱くてぬるぬるした中身に少しだけ触れる。 俺の胸にもたれたかがみんの背中がまたガタガタと震え始めた。 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 01 10 21.33 ID A7JUHfIr0 電車が止まる。俺はするりと右手を引き抜く。 そして後ろから両手でかがみんの腰を支えるようにして、ホームに下ろしてやった。 かがみんはガクガクと震える膝で必死に体を支えて、 俺の手を振り払うようにしてふらふらとホームを歩いていった。 今日は「ぎりぎり」まで責めて、そこで引くことができた。 その感触として・・・まだまだやれそうだ。かがみんは強い子だ。 この姫は、もっともっと俺を喜ばせてくれるはずだ。 いろんな人のお尻を触ってきたけど、やっぱりお前は・・・いいわ。 また会おうね。そしていつかは・・・ 俺の指を根元まで咥え込んで、いっしょにトラウマを克服しようよ・・・ ふらふらと歩くかがみんの背中を見送る。 俺は右手の中指を舐め上げながら、かがみんの余韻からしばらく抜けられなかった。 柊かがみ再会編 終了 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2008/07/12(土) 01 38 10.83 ID A7JUHfIr0 ~エピローグ~ かがみはがくがくと震える脚に必死に力をこめて歩いた。 駄目よ。これじゃ・・・また繰り返しじゃない。 あのとき、こなたやつかさにどれだけ心配をかけたか・・・ もう絶対にあんなことはあっちゃいけない。 でも、何で私がこんな目に遭わなきゃいけないの? そう考えると、かがみの目から涙が溢れてきた。 しかしかがみはそれをぬぐいながら、しっかりと歩き続けた・・・ 学校に入るときに少し足を止めて、ぐっと自分を励ました。 そしてなるべく自然に廊下を歩いていく。 「おっす、こなた~!」 そう、いつもと何一つ変わらない。 こうして自然にしていれば、誰も気づかないんだ。 そして痴漢に遭った事実すら消えていく。そんな気がした。
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柊かがみの憂鬱 Ⅰ ◆tu4bghlMIw 《〝わたし〟は、だれ?――柊かがみ》 彼女の物語は酷く捩れ曲がっている。 出会い別れは一種の流行り病のようなモノだ。サァッと吹き荒ぶ一迅の風のように現れ、また気が付けば消えてしまう。 だが、それらの取り留めのない話にも確かに〝芯〟のようなものは存在する。 寵愛すべき奇形は世界の澱。湖の中の泥のように掴んでも掴んでも掌から零れ落ちてしまう。 ――〝わたし〟は、だれ? だが、全ての話の軸を戻し、彼らの行動に指針を持たせるとする。 ならば「柊かがみ」という一人の少女の行く末にそれらは集約される。 少女の戦いは歪にして醜悪だ。 いや、もはや〝少女〟と呼ぶことさえおこがましいのかもしれない。 柊かがみの存在は、そんなちっぽけな枠組みを越えて更におぞましい何かへと昇華されてしまった。 ――〝わたし〟が、消えてしまう…… 彼女は彼女であって彼女でない。 彼女は彼で彼は彼女だ。 〝不死者〟であり〝狂人〟である柊かがみに救いは訪れるのか。 訪れるべき福音の刻は、少女の祝福は、誰によってなされるのか。 つるりとした触感の少しだけ黄ばんだ殻が少女の身体を覆っている。 少しだけ手を伸ばせば、遥かなる大空へと飛び立つ事は出来るだろう。 だが、薄くて脆い硝子のような殻を打ち破る力さえ、今の少女には残されていない。 ――たす……けて…… 儚い願いは、叶えられる筈もない。 ▽ 《〝好意〟に値するよ――つまりは、そうだね……〝好き〟って事さ――ジン》 燦々と降り注ぐ太陽。 雲はゆらりと空を舞い、無風に近い世界は光で染め上げられている。 日光を浴びて加熱されたアスファルトはじりじりと焼くような熱を放射し、遠くを見渡せば陽炎だって見えてきそうだ。 ジン達五人は現在、移動の真っ最中だった。 一箇所に留まっていても目標の人間を探し出す事は難しい。 そもそも、ジン達が接触したい人間は相当な数だ。 五人の人間関係を辿っていけばこの空間に残っている参加者の大半が何らかの糸で繋がっている事になる。 故に、ひとまずのターゲットを柊かがみに絞る事に決めた。 彼女は「喰った」ラッド・ルッソ――同時にラッドとも違うモノ――の精神に身体を支配されている。 一番最初に合流しなければならない人物は彼女である、というのは五人全員の総意だった。 「さて、彼女はフォーグラーの近くにいるのかなぁ」 「……ジン。お前は、空からいきなりあんな馬鹿でかい鉄球が落ちてきたらどうすると思う」 簡易的な道具の回収と交換を済ませ、先頭を行くのはスパイクとジン。 山小屋へと至る道で初めて遭遇してから――その時点では彼らの傍にはルルーシュとカレンがいた訳だが――それなりの時間が経った。 彼らの間にはそれなりの意思の疎通が取られている。 加えて理性的な思考や物怖じしない佇まいなど、年齢の差こそ存在するが二人には共通点が多かった。 「そりゃあちょっとばっかし驚いてみせてから見物に行くね。もちろん野次馬根性全開でさ」 「だろ。あんなモノ、気にならない奴は稀だ。 おそらく大半の人間はあの鉄球の近くに集まって来ているはずだ。少なくとも無駄足にはならん」 他の人間を引っ張っていく素質を十分に備えた二人の男は肩を並べてゆっくりと歩を進める。 ジンは両手を頭部の裏側に回しながらも周囲の警戒を怠らない。 トレードマークの黄色いコートを靡かせ、烏羽根色の黒髪は剣山のように天を突き刺している。 どこか不思議な印象を受ける独特なメロディーの口笛を吹きながらも、一切の油断や慢心は存在しない。 背筋を丸め、長身の身体をけだるそうに動かすスパイクの右手はズボンのポケットの中。 寂しげに揺れる「左腕のあった箇所」が強調されるようなその行為だが、彼の表情は腕を失う前と特に変わらない。 「ふむ、なるほどね。でもその代わり、」 「ああ。同じく『顔を合わせたくない人間』もアレには惹かれて来るだろうな」 「握れば掌が切れる諸刃の剣って事だね。さっきまでロボットバトルしてた連中とかかな?」 「……ああ」 つい先刻まで彼らが今移動しているC-6エリアでは赤と青、二色のロボットが大格闘戦を演じていた。 遠目だったのではっきりとしたフォルムまでは不明だが、それなりの規模の戦いであったのは確実だ。 二機とも北の方角へと消えてしまったが…… 「喉に突っかかって取れない小さな骨。だけど、そいつは同時に放って置く事なんて出来ない大きな星だ。 背に腹は変えられない。俺達は柊かがみを追わなくちゃならない訳だ。それは周知の事実だろう? ね、ゆたか」 「えと……はい。すいません、でもかがみ先輩をこのままにしておく事なんて……」 突然話を振られた小早川ゆたかが少し言葉を濁しながら答えた。 桃色のツーテールが風に揺れる。可愛らしい口元に見える若干の歪み。 やっぱり、どこかに憂き目があるのかもしれない、とジンは思った。 彼女の表情は優れない。それは人を、明智健吾を殺してしまった自責の念だろうか。 ゆたかが、かがみに向けて言った台詞があった。 『罪を背負いながら、胸を張って生きようって』 『私の罪は絶対許されないけれど、それでも前に進もうって』 自分自身と向き合う決意を固めたゆたかは強い娘だと思う。 確かに自身の手を直接血で汚した訳ではない。 ナイフで肉をザクリと裂き、神経をブチッと断ち、骨をゴッと切断する。 こんな、一連の人体の解体動作を経験した訳ではない。 掌に残る拳銃の反動も、苦悶の表情を浮かべ絶命する死体を見た事だってない筈だ。 彼女が覚えていたの圧倒的な暴力だけ。全てを無に、塵へと還す重力の波。 圧壊するグラビトンウェーブと最後まで自分を信じてくれた人が潰れていく光景を虚ろな瞳で眺めていた。 逃避の末、大切なものを自らの手で粉々にしてしまったのだ。 何の変哲もない――それは魔法や高次物質化能力のような特別な力、という意味だ――少女が容易く全てを振り切る事の出来る問題ではない。 「だね。ゆたかの願い、〝みんなで帰る〟……だろ? シンプルだけどでっかい夢だよ。でもさ、意外とゆたかって欲張りなんだね」 「え、そ、そんなっ。わ、私は……別に……」 思いもよらない言葉が返って来たのか、ゆたかが少しだけたじろいだ。 小さな身体からは想像も出来ないような、いざという時の行動力。脆くも強いダイヤモンドのような意志。 ソレは十分なほど賞賛に値する彼女の長所だ、ジンはそんな事を思う。 この子はちょっとばかり、自分を過小評価し過ぎるきらいがあるのだ。 なんて勿体ないのだろう。ダイヤの原石ほど磨けば光る輝石もないというのに! 「ゴメンゴメン、ちょっと意地悪だった。 赤衣装のサンタクロースじゃないけれど、それなら俺達がプレゼントしてあげられるかもしれない。 勿論、俺〝達〟の中にはゆたか、君自身も入っている訳だけどね。スパイクも同じ事を言いたそうにしてるよ」 「……言ってねぇ」 「またまた、照れちゃって。何気に俺はスパイクの事をかなり信用しているんだけどなぁ」 「ハッ――本当に、よく回る口だ」 まるでいじけた子供のようにスパイクが視線を散らした。 後ろから少しだけ距離を空けて歩いてくる鴇羽舞衣と結城奈緒が小さく笑った。 擬音で表すのなら舞衣はクスクス、奈緒はニヤニヤという具合だろうか。笑い方一つ取っても、性格というものはそれなりに反映されるものだ。 「……アンタ達って妙に仲良いわよね」 「――俺とジンがか? おいおい、奈緒。どこをどう見ればそんな感想が出てくるってんだ?」 振り返ったスパイクが奈緒へ「信じられない」という顔付きで不満を漏らす。 それもポケットに突っ込んでいた手も引き出して、かなりのオーバーリアクションで、だ。 「んなもん見てりゃ分かるっつーの。ねぇ鴇羽?」 「ん……まぁ、確かに。言われてみればそんな気もするかも」 「でしょ。ほら、なんていうのかな……阿吽の呼吸、みたいな。意思の疎通がバッチリ、とでも言えばいいのかな」 流されるままに舞衣は相槌を打った。 彼女の服装は先程までのシーツ一枚という絵画の裸婦のような服装から大分マシ?なモノに変わっている。 舞衣の右手には巨大な騎士槍――ストラーダ。 赤いスカーフとオレンジ色の甲冑鎧のような服が特徴的な服に身を包んでいる。 それを見た感想として、結城奈緒が『これ……なんか、あたしと藤乃の奴と似てる』と漏らしていた。 とにかく、舞衣はバリアジャケットを発動させる事で、自分にピッタリの服を手に入れる事が出来たという訳だ。 「だから、そりゃあな……ったく、お前が何を言いたいのか、まるで意味が分からん」 「普通ソレを乙女の口から言わせるかなぁ」 が、ここで調子に乗り出すのが奈緒である。彼女は生来、たまにそんなしょーもない悪戯をしてみたくなる部類の人間なのだ。 奈緒は先程スパイクに容赦のない詰問を食らった事を根に持っていたようだ。 これ幸いとばかりに、スパイクを攻撃し始める。 「……奈緒。お前、性格悪いってよく言われるだろ」 「えー別にぃー? っていうかあのね、スパイク。これでもあたしはかなりの清純派で売ってたりする訳」 あっけらかんと答える奈緒にスパイクは明らかに不審げな眼差しを奈緒に向けた。 何かを確認するようにスパイクは隣の舞衣の顔を見たが、一瞬ばつの悪そうな表情を浮かべた舞衣は彼と視線を合わせようとしない。 心根の優しいゆたかでさえ、何とも微妙な笑顔(苦笑とも言う)を滲ませている。「あ、あはははは……」という感じだろうか。 明らかに、この空間に存在する全ての人間が「いや、それはない」と奈緒の言葉を否定しまくっていた。 「そんな見え透いた嘘を信じる馬鹿がいるか」 「嘘じゃないってば。それにこう見えてもあたしは何気にシスター修行中の身でね……」 「あの、奈緒ちゃん、いくらなんでもそれは、」 得意げに言った奈緒に対して、舞衣が控えめながら釘を差した。 太陽の光を反射するような明るいオレンジ色の髪を指先でクルクルと弄る。 彼女のぎこちない表情は全てを雄弁に語っていた。曰く、流石にそこまで『有り得ない事』を言っちゃったら庇い切れないよ、と。 「…………鴇羽? あれ、アンタ知らなかったっけ――」 「ったく、くだらない話は無しだ無し。おい、ジン。お前も黙ってないで上手く纏めてくれ」 ここで話が妙な方向に脱線し始めた事を悟ったスパイクがジンに話を振る。 口の上手いジンにこの如何ともし難い話題を適当な所へ不時着させて貰うという腹だった。 しかし、ジンの答えは彼のそんな意図とはまるで異なっていた。 そう――少しだけ、彼も〝悪ふざけ〟に参加しようと思ったのだ。 「へぇ。奈緒ちゃんも中々、見てるね」 「……は?」 虚を突かれたスパイクの間の抜けた声が響く。 「なるほど、スパイクは頭も切れるし、腕っ節も相当なものさ。 それに何より冗談を理解出来る柔軟な頭。これは求めても手に入らない尊い存在だね」 「……おい」 彼の想像を絶する台詞にスパイクの顔面が引き攣り始める。 眉間に強烈な皺を寄せ、半開きになった唇の端がヒクヒクと戦慄いた。ジンは目を閉じ、含み笑いをする。 「歳は二十七、これは男としては一番脂が乗っている時期だね。 俺の歳は……まぁ今はここは伏せておこう。実際、あまり関係のない話だ。 なにしろ、亀の甲より年の功とも言うしね。修羅場を乗り越えた『渋み』って奴がスパイクにはある」 移動中、だった筈なのに。完全に足が止まってしまう。 思わず、スパイクはジンの瞳を見つめた。二人の視線が交差する。 (ちなみにこの辺りで女性陣の間で妙などよめきが起こったのだが、柄にもなく動揺しまくったスパイクはまるで気付かなかった) 「何気に、付き合いも長いしね。『二人で共有している秘密』もある……つまりは、」 「……待て」 スラスラと美辞麗句を並べていたジンがスパイクの静止する言葉も聞かずに一笑。 見る者を須らく恋に落とすような美少年のソレだ。 誰かの息を呑む音が真昼間の路上に響いた。そして、 「〝好意〟に値するよ――つまりは、そうだね……〝好き〟って事さ」 ▽ 《恋だとか、好きだとか、愛しているとか……馬鹿みたいだ――結城奈緒》 「な――――ッ!!」 錯覚だと思い込む事も不可能なくらい、はっきりとした発音でジンは言った。 スパイクは説明の出来ない衝動――少なくとも妙な叫び声を上げるのは我慢したようだ――を覚えた。 それは電撃か、それとも冷気だったのか。 彼の背筋が凍り付いたのは確かだったし、この太陽の下、ブツブツと全身に鳥肌が現れたのも事実。 単純なインパクトで言えばソレはまるで落雷の直撃を受けたようなモノだった。 とにかく、それは――相当に衝撃的な一言だった。 「……嘘」 息を止めたような世界の中で、一番最初に覚醒したのは意外にもツーテールの少女、ゆたかだった。 噛み潰すような呻き声が彼女の可憐な唇からこぼれ落ちる。 ゆたかの態度には勿論、理由がある。 唐突だが、彼女の従姉である泉こなたは自他共に認める結構な〝オタク〟である。 こなたの守備範囲はかなり広く、ライトノベルを除く大半の現代視覚文化に精通していた。 加えてゆたかのクラスメイトである田村ひよりやパトリシア=マーティンもこなたに似た感じの人間だ。 そして、そんな何とも濃い知り合いを持つゆたかは彼女達からちょっとだけ影響を受けていた。 というか、その辺りの概念について曖昧模糊でありながらも何となく知っていた。 勿論、詳しい知識を持っている訳ではない。 ただ『概念』としてそういう恋愛の趣向も存在するのだと理解していただけ。 ゆたかは覚えていた。自身が以前、ひよりに投げ掛けた質問と焦った彼女のあたふたとした反応を…… ジンが詩人めいた軽口を好む人間だとはゆたかも十分に知っている。 だが、彼がスパイクに捧げた台詞を彼女の脳は〝ガチ〟ではないか、と判断したのだ。 それは言葉の意味だけではなく、雰囲気やらその辺の問題。 全てを一言で表せば、つまり「すごく……それっぽいです」という感じになる。 「ジ、ジンさん……」 「何、ゆたか?」 「あの、ジンさんって――――そ、そういう、趣味の人なんですか?」 こういう時に、ど真ん中のストレートを放る事が出来る勇気。 そんなモノを持ち合わせるのはジンを除いたこの四人の中では小早川ゆたか、ただ一人だった。 良く言えば素直。実直。 場合によっては、ちょっとだけ空気が読めないと揶揄される危険性も孕んではいるが。 「……ゆたか。君は将来大物になるよ」 「え、そ、それってどういう……?」 「ちょ、ゆたかっ! まずいって、それは!」 「へ……な、奈緒さん?」 「そうだなぁ。その質問に応えるとすれば……」 口元をニヤつかせながらジンが頬を掻いた。 スパイクは何故か何も言おうとしない。 奈緒は思う。恋だとか、好きだとか、愛しているとか……馬鹿みたいだ、と。 とはいえ、まさかあの他愛もない悪戯がこんな事態を生む事になろうとは。 奈緒は背中に冷や汗をびっしょりとかいて完全に生きた心地がしなくなっていた。 仮にも今は殺し合いの最中である。このジンからスパイクへの爆弾発言は最悪、パーティ離散の危機すらあり得るのだ。 こんなタイミングでまさか告白を始める馬鹿が(しかも男×男である)存在するなんて夢にも思う訳がない。 と、こんな事を頭の中で巡らせているとジンが、 「――分かったかい、奈緒ちゃん。スパイクをからかう時はコレぐらいやらないとダメだ。スパイクは堅物だからね。 いや、多分これでもまだまだ足りないかもね。ところが、俺じゃあこれくらいが精一杯って所だね」 「…………へ?」 これまた気になる台詞と共にクックッと笑った。 「……弁士の次は役者か。転職先には困らんな、お前は」 「あ、覚えてたんだ。いやいや、中々名演技だったでしょ? スパイクも最初は騙されていたみたいだし」 「馬鹿か。自分で『俺は母ちゃん一筋だから』って言ってたのは誰だ」 「うん、まぁ俺だね。だけどスパイクって何気に記憶力良いよね」 「知らん」 あはは、とジンは針金のような髪を掻きながら喜色に満ちた表情を浮かべる。 一方で、スパイクはしかめっ面。いったい何時から気付いていたのかはいまいち計り知れない。 少なくとも最初から見破っていたようには見えないが…… 「じょ、冗談……だったって事?」 「そりゃあそうだよ。俺にそんな趣味、ないってば」 「そ、そうなんだ……」 両の掌を空に向け、ジンは小さく肩を竦めた。 尋ねた奈緒の心境は非常に複雑だった。妙な〝しこり〟のような感覚が彼女の胸の辺りを漂っていた。 結局、奈緒はぎこちない笑顔を浮かべる事しか出来ない。 「まぁ、スパイクの事を好きだってのは確かだけど」 「はぁっ!?」 またも、爆弾発言。 が、素っ頓狂な声を上げたスパイクを尻目にジンは、 「で――もちろん、奈緒もゆたかも舞衣も好きだよ、俺は」 ニコニコと人懐っこい笑顔を浮かべ、そして周りの人間へと微笑みかけた。 辺りに漂っていた妙な雰囲気がこの瞬間、立ち消えたような感じを奈緒は覚えた。 「楽園パレードに参加する殉教者か、それとも列を先導する笛吹きか。 たった三十時間しか経っていない筈なのに、この世界がまるで俺の全てだったんじゃないかと錯覚するくらいさ。 舞台に上げられた駒? それとも物語のための狂言回し? もしくは中から何もかもをひっくり返す革命家? 違うね、俺はドロボウだよ。『悪夢のようなパーティー』の主催役を頂戴しに参上したしがない盗人……」 普通、会話では絶対に使わない表現や単語のオンパレードだった。 が、そんな非日常的な言葉もジンが口にすれば生命を帯び、大気に躍動感をもたらすような輝きを持つ。 大げさな身の振りと共に、ジンは言葉を続ける。 「ところが困った事に、パーティーが一番盛り上がるのは一次会が終わった後って訳さ! 参加者の俺達としてはさっさと螺旋王サマを玉座から引き摺り下ろさせて貰わないとね。 そう、大分出席者は減っちまったけれど、その後も宴会は終わらない。 ここにいる皆は、二次会も三次会も強制参加だぜ? もちろん幹事は不肖この王ドロボウめが務めさせて頂きたく。 盗む事が仕事な筈の俺が自腹を切って涙が出るくらい最高に笑える『馬鹿騒ぎ』をプレゼントするよ」 それはつまり、大ドロボウからの第二の予告状だった。 主催に成り代わり、楽しいパーティとすりかえた後の話を彼はしているのだ。 『全てが終わった後にどうするか』なんて、まともに考えた事もなかった。 起こった出来事を処理するのが精一杯で、先の未来にまで目を向ける余裕なんてある訳がなくて。 全てがこの場所で終わってしまうような、小さな不安を拭い去る事はどうしても出来なかったのだ。 だから、ジンの言葉は奈緒の心に深く浸透していった。 本当に魔法使いみたいな人だな、何となくそんな事を思った。 それも決して口先だけの妄言ではないと思う。 ジンは実際、どんな困難だって蹴り飛ばすような妙な頼りがいがある奴だ。 奈緒の中では彼の評価は意外と高かった。ソレは彼女が最近出会った男にまともな奴が少ない事も影響している。 「二次会、ね……美味い料理は出るのかね。あとは酒とタバコだ」 「料理なら私がやるわ。あ、ゆたかも一緒にどう?」 「え、は、はい。お家でも交替で家事はやってましたし、少しくらいなら」 「いいね。中身も少しずつ具体的になってきた。だけど、こんな場所で突っ立って話し込んでる暇はないぜ。 気が付いたら靴底と地面がくっ付いて根が張っていたなんてのは上等じゃない。 もうフォーグラーはすぐそこだし……――ッ!!」 その時、仰々しい仕草で進路を指し示そうとしたジンが、突然表情を強張らせた。 すばやく振り向くと懐から取り出した夜刀神を展開させる。 スパイクも同様に何かに気付いたらしく、ホルダーからジェリコ941を抜き取り銃口を向ける。 残りの三人は事態の急変に付いていけなかった。 初めから戦闘能力のないゆたか、HiMEの能力を消失している舞衣はともかくとして、エレメントの展開が可能な奈緒さえ一瞬、動作が遅れたのだ。 そう、その〝気配〟を感じ取る事が出来たのはジンとスパイクの二人だけだった。 つまり身の毛の弥立つような殺意と日頃から付き合っている者達。 何度となく死線を潜り抜けた男だけが、台風の如き〝彼女〟の襲来を感知したのだ。 「――――砲撃、開始」 風に乗り、響いたのは凛とした少女のそんな呟き。 ▽ 《お前らも分かってるんだろ? もうかがみは『身体』だけしか残ってないってよぉ!――〝柊かがみ〟》 スパイク達が気付いた時には空間に波紋のような歪みが発生し、幾つもの射出物が顔を出していた。 それは奇妙な光景だった。 通常重力下において、質量を持った物体が『空中で地面と平行に静止する』事なんてあり得ない筈だ。 奇術やトリックの類――つまり強力な磁石を使ったり、ピアノ線で固定したり――を用いた場合だけ、科学的に立証出来る景色なのだ。 しかし、ソレを可能にする『技術』が存在するのもまた確かなのだ。 螺旋の遺伝子を持った螺旋生命体には全ての道理を蹴り飛ばす力がある。 全身を流れる二重螺旋が魔力回路の代わりを成すのだ。とある世界のとある力――魔術が発動する。 「逃げろっ!!」 誰がそう叫んだのか、それを確かめる術などはなく。 前方、フォーグラー方向から凄まじい量の小石や鉄屑などが発射された。 瞬間、豪雨のように圧倒的な質量の物体が五人の立っていた位置に殺到する。 アスファルトにぶつかり、砕ける様々な鉱物と鉄塊。 爆砕し、破砕する。世界は音に満ち、人の鼓膜を突き破るかのような爆音が開幕の鐘となる。 魔術――と一言に言っても、その形態は様々だ。 だが、大半の世界においての魔術は機械や他の技術でも十分代用出来る事を可能にする力。 本当に『ちょっとした技術』に過ぎない場合がほとんどだ。 もちろん、一部の例外を除いた仮定ではあるが。 単純にして明快。しかして、強力にして無比。 複数の物体を保存する空間の制御。別々の次元を連結し、隙間なく射出と回収を行う能力。 これだけの行為を可能にする一品、それすなわち宝具。 今、ジン達を襲ったのは宝具ランクEXの英雄王ギルガメッシュが所持する三つの宝具が一つ。 王の宝物庫と、現実の空間を繋げ、対象を穿つ王の財宝――ゲート・オブ・バビロンに他ならない。 「チッ――おいゆたか、どこかぶつけてないか」 「だ、大丈夫です……ありがとうございます、スパイクさん」 「ジン! そっちは!?」 「ギリギリセーフって所だね。舞衣ちゃんは何とか無事だよ」 スパイクはゆたかを、ジンは舞衣を抱え一瞬で攻撃を回避していた。 あと少しタイミングが遅かったら、蜂の巣にされていた可能性は高い。 それほどまでに〝彼女〟の一撃は抜群の精度を誇っていた。 「……何であんたら、あたしだけ無視するわけ」 「いやまぁ、うん。そりゃあね」 「……成り行きだ。とはいえ、そんな口が利ける内なら心配はいらんな」 一人だけ放置された奈緒が不満をぶち上げるが、男性陣は曖昧な解答でお茶を濁す。 幸いにも生来の猫のような敏捷性で彼女も砲撃から難を逃れていた。 何故かこのバトルロワイアルでは貧乏籤を引く事も多かったが、そもそもこういった要領の良さは彼女の特徴の一つである。 その時、 「ふぅん、まさか誰も死なないなんて……簡単に死ぬ『人間』だからかしら。 一つしかない命に固執する理由も分かる気がするわね」 太陽を背に浴びて、一人の少女が姿を現した。 淡いバイオレットのロングヘアーを背中に垂らし、身に纏う衣服は〝平和〟を象徴する白。 ピシリと手入れのされたそのスーツには一つのシミもない。 だが、彼女の意志はその純白のタキシードを紅に染める事だ。 胸元を彩る赤い蝶ネクタイが寂しげに揺れる――殺した相手の血液で自身が汚れる事を願って。 「かがみ先輩っ!」 堪らずゆたかが腹の底から〝彼女〟の名前を呼んだ。 それは真摯な感情に満ち溢れた慈愛の叫びだ。 本当に相手の事を思っている場合だけ、言葉は生命を持つのだ。 「あら……」 一方で現れた少女は穏やかな表情でその言葉を受け止める。 眉を僅かに顰め、まるでショーケースの中の貴金属を眺めるような視線で〝かがみ〟はゆたかを眺めた。 「ゆたかちゃん、元気そうね」 「……かがみ、セン、パイ。元に戻って――」 〝かがみ〟の口調は以前遭遇した時のようなラッド・ルッソのモノではなくなっていた。 だから、ゆたかは一瞬彼女が本当の「柊かがみ」に戻ったのだと思ったのだ。しかし、 「ゆたかっ! そいつは……!」 「元に戻る? ゆたかちゃん、私にはあなたが何を言っているのか分からないわ」 「……え?」 「かがみ、はもういない」 小さく〝かがみ〟が呻くように呟いた。彼女とゆたか達の距離は七、八メートルという所だろうか。 空気を伝わる振動が倒壊した世界にゆっくりと染み込んでいく。 とある殺人鬼のように〝かがみ〟が唇を醜く歪ませる。 「ここにいるのは私でもあり、俺でもある。【柊かがみ】だったモノ。 あいつは……かがみは消えて、俺だけが残った。そうだな、もうかがみなんて名前で呼ばれるのも癪だねぇ」 「お前は……!」 風が、吹いた。流れていく時間の中で、全ての人間は動きを止める。 「お前らも分かってるんだろ? もうかがみは『身体』だけしか残ってないってよぉ!」 「……君は本当に、相変わらず俺を驚かせてくれるね。 『黄泉返り』って奴かい? 神父や牧師が見たら、涎を垂らして君を成仏させに掛かるだろうね」 「おぅ、ジン! 案外元気そうじゃねぇか。この間はろくに絡んでやれなくて悪かったな!」 首筋に汗を滲ませながら、ジンが言った。対照的に〝かがみ〟は破顔一笑。 〝彼〟らしさに満ちた陽気で快活でどこか不気味な言葉で応じる。 「いや……いいパンチだったよ。流石にもうお腹いっぱいだけどね」 「あぁ? つれねぇじゃねーかよぉ、おいっ! とはいえ、生憎と絶賛大安売り中だ。食いたきゃ食わせてやるよ」 「ラッド、君は……」 「とと、気ぃ悪くすんなよ、ジン。今はお前とやり合うつもりはねーよ。俺達は仲間だもんなぁ」 〝かがみ〟が瞳を大きく見開き大声で吼えた。野生の獣のような激しい殺意が辺りを震わせる。 この期に及んでまだジンを仲間、と呼ぶ彼に奈緒達は不快感を覚えた。 なにしろほんの数刻前、〝かがみ〟はジンを思いっきり殴り飛ばし硝子窓に叩き付けている。 だからその口から発せられた「仲間」は、あまりにも薄っぺらい響きに満ちていた。 「……ふぅん。そういえば、俺達は君の事をなんて呼べばいいのかな。 実際のところ、君を【柊かがみ】と呼びたいような呼びたくないような、微妙な心境なんだ。ねぇ――ラッド?」 瞬間、ザクロの実ようにパックリと〝かがみ〟の唇が不気味に開かれた。 それは歓喜だ。自分が自分である証明。アイデンティティの獲得。レゾンデートルの認識。 そう、所詮身体とは器に過ぎない。 人の個性を明確に決定付けるのはその〝心〟だ。 そして、名前はヒトの〝個〟に大して最も影響を与える。 今の〝かがみ〟をかがみと足らしめる要素はその少女としての肉体だけ。 「そうだねぇ、つっても俺としてはどっちでも構わねぇぜ? 『お前』でも『君』でも別に気分悪くしねーよ! いくら俺が《分裂病》っぽいとはいえ、代名詞で呼ばれたからって急にキレたりしねぇ。フィーリングで呼んでくれ。大体な……」 〝かがみ〟は小さく咳払いをすると、 「そういうのってぶっちゃけ、どうでもいいと思わない? 表だとか裏だとか、白だとか黒だとか。 それこそ、かがみだろうがラッドだろうが。 ホント【分裂】という言い方は言い得て妙ね。だって混ざっちゃったら絵の具はもう元の色に戻らないじゃない。 ああ、でもよくよく考えてみれば――かがみの色はもうほとんど残ってないのかな? フフフフ…… もしも柊かがみが表に出てくるような事があっても、あの子は耐えられないかもねぇ。 だって、私がタカヤ君を殺してしまった訳だし。ま、どっちかといえば……やっぱり私は『ラッド・ルッソ』なのかな」 そして告げられる柊かがみの分裂。極めて消失に近いその分裂。 自身を固有名詞で【ラッド・ルッソ】と呼んだ少女は満足げに笑う。 彼女の微笑は見るものを全て隷愛の世界へと引き摺り込むような蠱惑に溢れていた。 背筋が痺れる。喉がカラカラになる。 奈緒は頭をフル回転させて考えた。コイツはいったい――だれだ、と。 しかし、そんな疑問を抱いたのはこの場にいる人間では『奈緒だけ』だった。 そしてもう一人、過剰なまでに〝かがみ〟の言葉に反応した人間がいた。 「Dボゥイが――死んだ?」 太陽の色のバリアジャケットに身を包んだ明るいオレンジの髪色の少女がぼそり、と呻いた。 亡き竜の巫女。水晶のHiME。至高の舞姫。 鴇羽舞衣が唇を戦慄かせながら、濁った瞳で〝かがみ〟を見た。 時系列順に読む Back 宴のあと Next 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 投下順に読む Back 宴のあと Next 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 269 最愛ナル魔王サマ(後編) 柊かがみ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 273 亡き王女のためのバラッド(後編) 小早川ゆたか 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 273 亡き王女のためのバラッド(後編) 鴇羽舞衣 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 273 亡き王女のためのバラッド(後編) スパイク・スピーゲル 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 273 亡き王女のためのバラッド(後編) ジン 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ 273 亡き王女のためのバラッド(後編) 結城奈緒 275 柊かがみの憂鬱 Ⅱ
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696 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/01/29(火) 10 13 52 MHzfXUn6 ちょwwwwどんだけwwwww 柊かがみの指名手配書 http //usokomaker.com/wanted/?a=Maker oo=%C9%A2%A4%AB%A4%AC%A4%DF 697 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/01/29(火) 10 22 30 D5Wt9Peq 696 ぶは、またktkrww 苗字と名前の間に半角スペースや全角スペースなんて入れてはいけないぞ!! 698 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/01/29(火) 10 41 41 YiebLyeE http //usokomaker.com/wanted/?a=Maker oo=%C0%F4%A4%B3%A4%CA%A4%BF こなただと http //usokomaker.com/nenga/?a=Maker oo=%C0%F4%A4%B3%A4%CA%A4%BF oo2=%C9%A2%A4%AB%A4%AC%A4%DF 699 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2008/01/29(火) 10 42 34 O4+Lmk64 こなたでやると・・・さらに氏名の間にスペースを入れると・・・
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柊かがみの憂鬱 Ⅳ ◆tu4bghlMIw ▽ 《〝私〟は、だれ?――柊かがみ》 重い波の音。 荒原を渡る風の音。 朽ちた建物の崩落音。 それら生み出すイメージは寂寥だ。 雲は削った白金。 遠くに見えるのは珪素(シリコン)の都市。 夕映えは熱した鉄の色。 重たくたゆたうは水銀の海だ。 磨いた銅で出来た太陽がぴかぴか輝いていて、鈍く光る銀で出来た月と交互に水銀の海を出入りする。 重い雫に濡れたそれらは、死と再生を繰り返す。 空を埋めた時計は規則正しく、けれど寂しく、一定のリズムを刻み続ける。 時折閃く明かりは、情報の飛沫。 整然と、そして凄然と。 空虚で、しかし満ちて。 生きて、死んだ世界だ。 その世界に自分以外の誰かがいる。そう彼は―― 「よぅ、まだ意識はあるかよ」 声を掛けられてようやく意識が覚醒した。 空は赤く、砂浜でまどろむ私は歯車の空を一瞥する。 そして話しかけてきた男に視線を向ける。しかし、 「愚図だねぇホント。つーか馬鹿だなマジ。あまりに愚か過ぎて笑えもしねぇ」 そこには、誰もいなかった。だけど声だけは聞こえる。声だけは私の中に伝わってくる。 『世界』が、私の中に形作られた歯車の世界が語り掛けているみたい。 「まぁいいか。おい、お前自分の名前……思い出せるか? っていうか俺が誰だか分かる?」 変な事を聞くものだと思った。私が私を忘れる訳が――――? ……出て、こない? 私は私を知っている。だけど名前が思い出せない。 私は彼を知っている。だけど名前が思い出せない。 「おいおい重症だな、こりゃ。一応俺達はどっちも不死者だから偽名は名乗れないんだぜ? だからよぉ、お前が俺に名乗れたらソイツがお前の本当の名前だって訳だ。分かりやすいねぇ」 不死者……? 「しかし、何だ。さてはゆたかちゃんの大好きなタカヤ君をぶっ殺しちまったせいで、更に引き篭もっちまったか? まぁ衝撃のおっさんが死んで、おめーはずっと一人ぼっちだったからなぁ。 外じゃあ、奈緒ちゃん達が俺達のために戦ってるっつーのにホント愚図だな、テメェは」 ゆたか……? タカヤ……? 衝撃……? 奈緒……? 何だろう、胸が……痛い。 だけど、それは大切な名前だ。 絶対に、絶対に私が忘れてはならない名前。 「ああ、忘れちゃならねぇなぁ。つっても殺した相手の名前を全部暗誦しろなんて言わねぇ。 っていうか、それじゃあ名前を知らない奴が殺せねぇだろ? それじゃあ、ちっとばかし生温いってもんだ」 自分の名前も分からないのに、他の人の名前なんて……どうでもいい。 「ヒャハハハハハ、ネガってんなぁ! まあいいや。俺がここに出て来れたのだって俗に言う『奇跡』って奴でよ。 表で暴れてるおめーの身体と俺の精神の模造品――そのジャンクだな。 『世界』はソイツがどうも気に食わねーらしいんだわ」 世界……? 「おう。っつても世界は世界だ。他に言いようがねぇ。 まぁ……それでも納得出来ねぇんなら、不死者の魂とでも思ってくれや。とにかく歪な存在なんだとさ、俺達は。 因果律が乱れるとかなんとか。だから責任とって捩れを正してこいだとよ。ったく、人遣いが荒いねぇ」 下品な口調で勝手に喋り、勝手に大笑いする男。 彼はいったい誰なのだろう。こんな所に出て来るという事は、きっと私と深い関係があるのだろうけど。 私は彼が好きだったのか? 私は彼が嫌いだったのか? 私は彼を憎んでいたのか? 私は彼を…………………? ――いや、それ以前に今、こうしている〝私〟は何者なのだろう。 〝私〟が分からなければそもそも他人との関わりについて考えるのなんて無理だ。 『自己』とは『他者』という存在を理解して初めて生まれる概念だ。 それはつまり、主観と客観の違い。 自分は他の人間とは違う。 別の意思を持った異なる存在であると理解する事で初めて『自意識』は誕生する。 一人の人間に対して、個々人が持っているイメージというのは意外なほどに異なっている。 もちろん、その認識はその本人ですら違っているのだから。 皆の中に私がいて、私の中にも皆がいる。 でも、それでは――『私の中の私』とはいったいどのような存在なのだろう。 ――〝私〟は、だれ? 「お、ようやく理解したみたいだねぇ。そうさ、俺はもうとっくに退場済みの亡霊な訳よ。 つーか綺麗に死んだんだから、墓場から掘り起こしてくんなっつーの。 今舞台に立ってんのはおめーなんだよ。俺はお前の代わりに『見て』やる事なんて出来ねぇ。っていうか頼まれてもやんねーよ。 誰にも頼るんじゃねぇ。お前〝が〟見るんだよ。お前がその二つの眼でしっかりとなぁ!」 私が……? 自分の目で……? 「――っと。そろそろ時間だな。んじゃあな、今度こそ俺は逝かせて貰うわ。 ああ、あんな流儀もへったくれもねぇ間抜けに負けんじゃねーぞ、おい! 無様な真似晒したら今度こそ俺が殺してやるよ。死にたくねぇなら必死にやるんだな! ……ん、待てよ。死にたくない……? ああ、いけねぇなぁ! こうなっちまっても俺がおめぇを殺さなくちゃならねーじゃねぇか! ヒャハハハハハハハハハハッ!」 ねぇアンタは、誰なの? どうして私にここまでしてくれるの? 「おいおいおい、馬鹿かテメェは! 本当に学習しねぇ奴だな。 人に名前尋ねる時にはよぉ、最低限の礼儀っつーもんがあんだろうが。 だからよぉ、まずテメェが先に名乗るのが筋ってもんだろ? お前が思い出したら、俺も教えてやっからよ」 彼の声が、消えていく。 黄昏の世界が終わっていく。 「ほれ、いい加減言ってみろや――で、お前の名前は?」 私の、名前は…… ▽ 《一緒に……帰りましょう、かがみ先輩。そんな怖い顔、かがみ先輩には似合いません――小早川ゆたか》 「り、竜……?」 白い、炎の竜がボロボロになった市街地に降臨する。 ゆたかの口から漏れるのは感嘆の呻きだけだった。 この殺し合いに参加させられてから約一日と半分の時間が経過した。 だから、少しぐらい不思議な事に出くわしても決して驚愕する事はない……そう思っていたのだ。 (大きい……でも、綺麗……) 煙のように長い尾。灼熱の翼に頭部に刺さった巨大な剣。 鋭い爪はビルの壁さえ易々と切り裂き、全身から噴出す炎は空気さえ燃やし尽くしてしまいそうだ。 「おいおい、なんだ……こりゃあ……!」 「フリードリヒの何倍あるんだろうね。同じ白龍だけど、もうなんていうか規模が違うね」 「ほう――これはまた、愉快な魔獣だな」 「それを……さっさとやれっつーの」 各々が舞衣の背後に出現した巨大な竜――カグツチ――を見て、驚嘆する。 戦況を一変させるには十分過ぎるほどの圧倒的戦力。 呼び出した舞衣も両手脚にエレメントである天輪を展開し、ゆっくりと空へと上昇する。 「ッ――――!?」 半ば移動砲台としてゆたか達に攻撃を加えていた〝かがみ〟も、カグツチの異常なまでのスケールに圧倒され足を止める。 赤く、まるで化け物のように濁った彼女の瞳にすら焦燥が浮かぶ。 単体としての力はまさにこの会場内でも随一。 また、舞衣が持つエレメントの鉄壁の防御性能は持久戦にもってこいだ。 (だけどかがみ先輩を止めるには……!) ゆたかは考える。 この状況であのような大竜が現れたとして――ここからが問題だ、と。 確かにこれで、〝かがみ〟を『消滅させる』ための準備は整ったと言っていいだろう。 しかし、救うために必要なのはあの〝かがみ〟の身体を偽りの支配から解き放たなければならない。 では、それはいったい――何なのだろう? 愛か、信頼か、友情か。 誰もがボロボロになりながら戦っている。 奈緒の腹部の傷はゆたかの眼から見てもかなりの重傷だ。 だけど、彼女は決して膝を折ろうとはしない。 ブツブツと文句を言っていたギルガメッシュも〝かがみ〟を吹き飛ばしてはしまわない。 それどころか、ダメージを負って動けない奈緒とゆたかを気遣ってくれているようにさえ見える。 (じゃあ、今、私はいったい何をしているの? これじゃあ……かがみ先輩を救えないッ……!) 皆に柊かがみを救って欲しい、と懇願したのは何を隠そうゆたかなのだ。 しかしゆたかは真っ先に攻撃を食らい、あっという間に足手纏いになってしまった。 戦う力がない、なんて言葉は言い訳にしかならない。 これは自分のミスなのだ。いや、戦おうとしなかった自分への罰……! 「私は……償わなくちゃならないんだ」 両脚に力を入れる。 両指、頭……全部大丈夫だ。問題なく動く。 「最期まで私を信じてくれた明智さんに……迷惑を掛けた皆さんに……!」 掌を地面に押し当て、グッと力を入れる。 さっき打ち付けた頭がグラグラと揺れて倒れてしまいそうになる。 だけど負けない。絶対に負けない。 「ゆ……たか?」 お腹の辺りを押さえて辛そうな表情をしている奈緒さんが私を心配そうな眼で見た。 平気です、心配しないでください――そう言いたかったけど、口が動かなかった。 大分無理をしているんだ。もう、余分な力は残っていない。 「かがみ先輩……聞いてください。私は、弱虫でした。 かがみ先輩を誰よりも助けたい筈なのに、なにも出来ずに…… ……逃げていた。はい、そうです。情けない自分自身から眼を逸らしてた……」 両手を視点にゆっくりと、立ち上がる。 ガクガクと膝が揺れる。世界が回っている。だけど、倒れる訳にはいかない。 もう、悲しい思いはしたくない。そして、させたくもない。 かがみ先輩を助けるんだ。絶対に絶対に絶対に――――! 「ゆ…………た、か?」 虚ろな表情を浮かべた〝かがみ〟がゆっくりと、口を開いた。 『ゆたか』 小さな、本当に小さな声で少女の名前を呟いた。 「一緒に……帰りましょう、かがみ先輩。そんな怖い顔、かがみ先輩には似合いません」 ゆたかは、笑った。 千切れそうな手足に力を込め、一歩、また一歩と〝かがみ〟へと近づいて行く。 王の財宝が発動すれば、一瞬で死を迎えるであろうまさにデスウォーク。 だけど、ゆたかは決してソレを躊躇わなかった。絶望に堕ちていてたさっきまでの自分とは違う……! 「あぁああああああああああああっ!」 一際大きな叫び声。〝かがみ〟が頭を押さえながら激しく身体を震わせる。 荒れ果てた市街地を照らす太陽は変わらず。 戦いの爪痕を残した大地だけが、その輝きを跳ね返す。 「――わ、たし………………名前は……」 「頑張って! かがみ先輩ッ!!!!」 絶叫の幕が降り、偽りの人格はその輪郭を放棄する。 不死の身体となり、幾つもの厄禍を経験した少女がいた。 自分で自分を捨て、狂った人格に身体を乗っ取られた少女がいた。 「ラッド……じゃない。私は、ラッドじゃない。〝不死身の〟……でもない。私は……」 この瞬間――――全ての歪みは是正され、原型を取り戻す。 「私の名前は……柊かがみ。ただの、柊……かがみ」 ▽ 《……さようなら――柊かがみ》 私は――償わなければならない。 「かがみ……せ、先輩……」 「ん。ごめんね、ゆたかちゃん。その……色々、心配かけちゃったみたいで」 「うわぁああああああああああ!」 「あ、ちょ、ちょっと! 抱きついちゃダメだって。ほら、私の服血だらけだし…… それに、また演技してるかもしれないでしょ?」 「や、やめません! それに、かがみ先輩はかがみ先輩です……私には分かります!」 顔を涙で濡らしたゆたかちゃんが私に抱き付いてくる。 相当な傷を負っている筈なのに、小さな身体のどこにこんな力が隠れていたのだろう。 私は小さなゆたかちゃんの頭を撫でながら苦笑するしかなかった。 色々な事があった。辛い事、悲しい事……たくさん、たくさんだ。 「ゆたかちゃん、ちょっといい?」 「す、すみません。私少し取り乱しちゃって……」 ゆたかちゃんが頬を少しだけピンク色に染めながら、私の身体から離れる。 でもその顔はさっきまでの辛そうな顔じゃない。 太陽のように輝いた心の底から楽しくなるような笑みに満ちている。 「……奈緒ちゃん、ごめんね」 「今更……謝って遅いっつーの……ま、良かった……んじゃない」 膝を付き、肩で息をしていた結城奈緒がそれでも憎まれ口を叩く。 眉間に寄った皺、辛そうにつり上がった眉。それでも、口元は精一杯の笑顔。 彼女の心遣いに思わず涙が出てしまいそうだった。でも……泣いてる場合じゃない。 「鴇羽……舞衣ちゃん、でいいのかしら」 「う、うん……」 「一つ、お願いがあるの」 突如話し掛けられた舞衣が言葉を濁らせながら応じる。 〝かがみ〟ではない状態で話すのは初めてだ。彼女の戸惑いも分かる。 私は、大きく息を吸い込んだ。そして、 「その竜に……私を殺させて、欲しいの」 決して、後戻りの出来ない一言を口にする。 「えっ――!?」 「な、なんでですかっ、かがみ先輩! せっかく元に戻れたのに……! かがみ先輩が死ぬなんて、そんな……」 「我侭言わないの、ゆたかちゃん。これはね……もう、決めた事だから」 「どうしてですか!? 理由を……理由を教えてください」 こうなるとは思っていたけど、ゆたかちゃんは眼を白黒させて私に追い縋った。 分かっていたのに……心が、痛い。 「……限界なの」 「え?」 「今はこうして私が表に出て来ているけど、もう一人の〝かがみ〟の力は強いわ。 アイツが次に目覚めたら、きっと皆に迷惑を掛けてしまう」 「そんな……! あっ、眼帯! 眼帯をすれば……!」 「それもだめ。アイツが言ってたでしょ? 『もうかがみは身体しか残っていない』って。 あれはね、結構当たってるの。柊かがみがね、ラッド・ルッソを喰った筈が喰われてしまったのは確かな事実なの。 アイツの人格の極端な部分に汚染されて、元いたかがみはもう、消えてしまった。 こうして今ここに出ているのはバックアップみたいなモノ……そして、それもすぐに消えてしまう……」 「うそ……」 歪んだ世界を正すには、少しだけ力が足りなかったのだ。 私が私を手に入れても、それは全てを元に戻すには足らない。 ラッド・ルッソが表に出ている時間が長過ぎたのだ。 もしくは、私が表に出ている時の行動が何か間違っていたのかもしれない…… 「本当に、いいの」 舞衣が訊いた。 「うん……お願い」 「ったく、残念……あたし達の勝負はお預けか」 傷口を押さえながら奈緒が言った。 紅が――広がる。 「そう? 多分またすぐにあたし達、会えると思うよ」 「うわっ……! 何よ、その言い分は。ホント、アンタって性格最悪だね」 「いや――奈緒ちゃんには負けるよ」 「……言ってろ、バカ」 これも、私の罪だ。 だから全部背負って私は消える。 責任とか、そういう問題はとっくに超越しているとしても……それが柊かがみのケジメの付け方だ。 「カグツチ……お願い」 彼女には辛い選択を託してしまったかもしれない。 いっそ、殺人など何の抵抗もなく犯すであろうあの黄金鎧の男に頼めば良かったかもしれない。 だけど、私には分かっていた。今、決して彼には触れてはならないという事を。 英雄王ギルガメッシュは誰よりも鋭い感覚と、魔術じみた勘を持つ男だ。 だから彼が――私ですら気付いている事を見落としている筈がない。 アイツと結城奈緒の関係は、私とアルベルトのようなものだ。 羨望さえ感じる相方に追いつきたい……! 肩を並べるような力が欲しい……! 認められたい……! そういう気持ちが奈緒にもきっとあった筈で。 私には、今、ギルガメッシュに言葉を掛ける資格はない。 アルベルトの気持ちをぶつけられた私には……! 炎がカグツチの喉をゆっくりと昇っていく。 最期の瞬間はまるでレイトショーを見ているような、コマ送りの世界だった。 いかに極めて不死に近づいた身体とはいえ、あれだけの大きさの竜の攻撃を食らったら一溜まりもないだろう。確実に――死ぬ、筈だ。 こなた……つかさ……今から、そっちに行くね。 皆で、ゆたかちゃんを応援しよう。 「……さようなら」 炎の竜が口腔を開き、そして――――世界に光が満ちた。 【柊かがみ@らき☆すた 死亡】 ▽ 《でも、最期に一つだけ……聞きたいな。あたしさ……金ぴかの役に立ってた?――結城奈緒》 ――バカじゃなかろうか、あたし。 頭、痛い。 お腹に空いた風穴からはドバドバと滝のように血が吹き出すし、何か喉を昇って口からも出て来るし。 もう……ぶっちゃけ、立っているのは無理だ。 だから地面に寝そべってしまう。 血が足りないから、まるで身体がふわふわと浮いているみたいになる。 そう、天にも昇る浮遊感という奴だ…………訂正、やっぱ気持ち悪い。 だけど……うん。何だろう、この最期は。 結局、柊かがみとのバトルは一つ残らずこっちの負け。 今回のなんて、一対多っていうかなり一方的な構図だったのにあたしもジュリアも見事にやられてしまった。 しかも何か気付いたら……みたいな感じで。 ジュリアは……消えたみたいだ。もう、チャイルドを呼び出す力なんて残っている訳がない。 でも、一つだけ嬉しい事はこの空間では『大切な人』を失わなくてもいいって事だ。 ママは……死なずに済む。 一番勝機があったのは最初に戦った時だけど、あの時はあたしも若かった。 蝕の祭が終わって、金ぴかじゃないけど慢心していたのだろう。 というか、調子に乗っていたんだ。あたしと金ぴかのコンビが負ける筈なんてない――ってね。 「ねぇ、金ぴか」 「……何だ、ナオ」 今、あたしは固いアスファルトの上で枕もなくぶっ倒れてて、金ぴかがソレを見下ろしている。 久しぶりのこのやり取り。 いったい何回この問答を繰り返したんだろう。 あ、そういえば一番最初はアイツはあたしの事を『蜘蛛女』って呼んでたっけ。 そういえば…………しばらく聞いてないような。 ……へぇ、これでもあたし……意外と、認められてたのかな。 「不思議、だよね」 「――不思議?」 「そう。あたしがこうして死にそうな時に、あたしの傍には金ぴかがいる。 最初はともかく、アルベルト達と会ってからはほとんど別々に行動していたのにさ。 『二人がここにいる不思議』……なんちゃって」 「つまらんな――これっぽちも笑えん」 「うわっ、酷…………ま、アンタも相変わらずって事かな」 あたしの眼は霞んでしまって、金ぴかがどんな顔をしているのか全然分からない。 っていうか、こういうシーンなんだから、突っ立ってないでもう少し暖かみのある対応をしてくれてもいいのに。 「あたしさ……金ぴかが来た時、実は凄くホッとしたんだ」 「……何?」 「ほら――映画館でアンタが着てた黒猫のスーツ、あったじゃない。あれじゃなくて……ほら、その、鎧」 「フッ……お前も変わらんな。あの衣装に込められた匠の技術を理解出来んとは」 「猫は……ね。あんま好きじゃない。いっつも一人だから。 まぁいいじゃない……今の格好なら、金ぴかって呼んでもおかしくないもの」 頭部以外の全てを覆うフルアーマータイプの黄金の鎧。 アルベルトに砕かれた筈のその鎧をギルガメッシュは身に着けていた。 多分、その、あれだ。バリアジャケットって奴。 見慣れた光景。自分の中のイメージと実物とがピッタリとくっ付く。 「そう、初めと貴様は何も変わらんよ。まず何よりも恥じらいが足りん。 言葉遣いもまだまだ乳臭さが抜けんし、加えて礼節も気品も、女としての魅力が何もかも欠けている」 「……下品って事ね。いいよ、その辺は。アンタに好かれたいとは思ってないし」 ――恋だとか、好きだとか、愛しているとか……馬鹿みたいだ。 そんなのは恋多き乙女である鴇羽に任せておけばいい。 ギルガメッシュに女として見られる? うわ、寒気がするっての。 「でも、最期に一つだけ……聞きたいな。あたしさ……金ぴかの役に立ってた?」 この一言だけを聞きたかった。 そのためだけに一体どれだけの寄り道をしたんだろう、そんな風にさえ思える。 ギルガメッシュと対等になりたい。肩を並べて歩きたかった。 全然あたしっぽくないセンチメンタルな願いだけど、思ってしまったものは仕方がない。 「それが辞世の句か――馬鹿な事を聞くものだな」 「いいから、答えろっつーの……」 ギルガメッシュは、太陽のような輝きを持った奴だった。 いわばあたしはその煌きを目指して飛び立ったイカロスだ。 あたしは……ギルガメッシュのような人間になりたかったのかもしれない。 常に自信に溢れていて、何もかも自分の実力で解決してしまうような大きな人間に…… そして、今蝋燭で出来た羽根は燃え尽きて地面に叩きつけられようとしている―― 「まだまだ、だな。だが――――悪くはなかった」 「……そ、ありがと」 あたしには、その時アイツがどんな顔をしていたかなんて分からない。 薄れていく光。広がっていく闇。 指の先から力が、体温が、命が抜けていくような感覚。 ゆっくりと何もかもが終わっていく。凍り付いたまま、硝子の彫像になっていくみたいに。 だけど心は温かだった。 ギルガメッシュの回答は、あたしが考えていた中では一番上等なものだった。 だって……完全に認められちゃったら、そこで『終わり』って感じになってしまうから。 それに、少なくとも――この最期は少し前のあたしが恐れていた一人ぼっちでの最期じゃない。 あたしにとって、大切な人はママただ一人だった。 そりゃあ今も一番大事なのはママだ。それだけは何があっても変わらない。 ……ギルガメッシュ? まさか、そんなのは有り得る訳がない。 あたし達はそういうのとは違うんだ。 主君と臣下……最初は面倒だったけどさ、まぁ今となっては悪くないと思うし。 でも、その次くらいに大切なモノなら今のあたしは一杯持ってる。 元の世界にも、この世界にもたくさん、たくさんだ。 だから――怖くなんて、ない。いや、そりゃあ……ちょっとは、怖いけどさ。 ゆっくりと、眠るように、落ちるように眼を閉じる。 世界に広がるのは一滴の曇りもない漆黒。 バカだった。 もうちょっと上手く立ち回っていれば良かったのだろうか。 分からない。分からない。だから必死に眼を閉じる。 ……怖い、けど。 涙がこぼれてしまいそうだけど。 最後まで笑っていた、あのバカ女にも負けたくないし。 もっと生きたい。 もっと笑って、泣いて、楽しい事を一杯して……! けど、それは全部……無理なんだ。 あたしは……死ぬんだから。 だけど、あたしは絶対に泣いたりなんてしない。 弱音だって口には絶対出さない! あたしは、精一杯胸を張ったまま生きるんだ――最後の、終わりが訪れるまで。 ギルガメッシュ……あんたと一緒にいるの、意外と楽しかったよ。 【結城奈緒@舞-HiME 死亡】 【C-6/市街地/二日目/昼】 【ギルガメッシュ@Fate/stay night】 [状態]:疲労(大)、全身に裂傷(中)、身体の各部に打撲、黄金鎧型バリアジャケット [装備]:乖離剣エア@Fate/stay night、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]:支給品一式、クロちゃんマスク(大人用)@サイボーグクロちゃん 、黄金の鎧の欠片@Fate/stay night [思考] 基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。月を目指す。【天の鎖】の入手。【王の財宝】の再入手。 0:??? 1:菫川ねねねに『王の物語』を綴らせる。 2:“螺旋王へ至る道”を模索。 3:頭脳派の生存者、 異世界の情報、宝具、それらに順ずる道具を集める(エレメント、フォーグラーに興味)。 4:目障りな雑種は叩き切る(特にドモンに不快感) 5:全ての財を手に入れた後、会場をエアの接触射撃で破壊する。 6:月に何かがあると推測。次に月が昇った時、そこに辿り着くべく動く。 【備考】 ※螺旋状のアイテムである偽・螺旋剣に何か価値を見出したようですが、エアを手に入れたのでもう割とどうでもいいようです。 ※ヴァッシュ、静留、ジンたちと情報交換しました。 ※ギルガメッシュのバリアジャケットは、1stがネイキッドギル状態、2ndがクロちゃんスーツ(大人用)、3rdが黄金の鎧です。 2ndを展開する意志はなくなりました。強敵に会った時にのみネイキッドのバリアジャケットを展開しようと考えています。 ※会場は『世界の殻』『防護結界』『転移結界(確率変動を発生させる結界)』の三層構造になっていると推測しました。 ※会場の形状は天の方向に伸びるドリル状であり、ドーム状の防護結界がその内部を覆っていると推測しました。 ※会場のループについて認識済み。 会場端のワープは、人間以外にも大出力攻撃を転移させる模様です。 ※マッハキャリバーによるウイングロード展開を習得。カタパルト代わりに使用可能(ちょっと飽きた)。 ※マッハキャリバーから詳細名簿の情報を少し聞いたようです (少なくともガッシュ、ヴィラル、シャマル、スカー、ねねねについて大まかに知ってます)。 【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】 [状態]:疲労(大)、心労、左腕から手の先が欠損(止血の応急手当はしましたが、再び出血する可能性があります) 左肩にナイフの刺突痕、左大腿部に斬撃痕(移動に支障なし) 、腹部に痛み [装備]:ジェリコ941改(残弾0/16)@カウボーイビバップ [道具]:支給品一式×4(内一つの食料:アンパン×5、メモ×2欠損)ブタモグラの極上チャーシュー(残り500g程) スコップ、ライター、ブラッディアイ(残量100%)@カウボーイビバップ、風水羅盤@カウボーイビバップ ヴァッシュ・ザ・スタンピードの手配書@トライガン、防弾チョッキ(耐久力減少、血糊付着)@現実 日出処の戦士の剣@王ドロボウJING、UZI(9mmパラベラム弾・弾数0)@現実、レーダー(破損)@アニロワオリジナル ウォンのチョコ詰め合わせ(半分消費)@機動武闘伝Gガンダム、高遠遙一の奇術道具一式@金田一少年の事件簿 水上オートバイ、薬局で入手した薬品等数種類(風邪薬、睡眠薬、消毒薬、包帯等) テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード 、ナイヴズの銃@トライガン(外部は破損、使用に問題なし)(残弾3/6) デリンジャー(残弾2/2)@トライガン、デリンジャーの予備銃弾7 [思考] 1:…… 2:ウルフウッドを探す(見つけたあとどうするかは保留) 3:カミナを探し、その後、図書館を目指す。 4:ルルーシュにニアの伝言を伝える。 5:テッククリスタルは入手したが、かがみが持ってたことに疑問。対処法は状況次第。 6:全部が終わったら死んだ仲間たちの墓を立てて、そこに酒をかける。 [備考] ※ルルーシュが催眠能力の持ち主で、それを使ってマタタビを殺したのではないか、と考え始めています。 (周囲を納得させられる根拠がないため、今のところはジン以外には話すつもりはありません) ※清麿メモの内容について把握しました。 会場のループについても認識しています。 ※ドモン、Dボゥイ(これまでの顛末とラダムも含む)、ヴァッシュ、ウルフウッドと情報交換を行いました。 ※シータの情報は『ウルフウッドに襲われるまで』と『ロボットに出会ってから』の間が抜けています。 【鴇羽舞衣@舞-HiME】 [状態]:背中にダメージ、全身に擦り傷、顔面各所に引っ掻き傷、引っ張られた頬、首輪なし、全身に軽い切り傷 疲労(大)、バリアジャケット [装備]:薄手のシーツ、ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]:支給品一式、釘バット、X装置、ゲイボルク@Fate/stay night [思考]: 皆でここから脱出 1:何としてでも皆を守る [備考] ※螺旋力覚醒 ※失った高次物質化能力を取り戻しました。 ※舞衣のバリアジャケットは《炎綬の紅玉》鴇羽舞衣@舞-乙HiME。飛行可能。 【小早川ゆたか@らき☆すた】 [状態]:発熱(中)、疲労(極大)、心労(中)、軽い脳震盪、左腕骨折、罪悪感、螺旋力覚醒 [装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS [道具]:支給品一式 、ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!! [思考] 基本-みんなで帰る 1:……かがみ、先輩 2:舞衣がDボゥイを好きなのかどうか気になる [備考] ※自分が螺旋力に覚醒したのではないかと疑っています。 ※再び螺旋力が表に出てきました。 ※ねねねと清麿が生きていることに気がつきました。明智の死を乗り越えました。 ※舞衣との会話を通じて、少し罪悪感が晴れました。 ▽ 《つまり、だね……ここで君が死ぬのが何もかも一番丸く収まるって事――???》 「はぁっ……はぁっ……!!」 全てが終わり、全ての終幕が訪れた――訳ではなかった。 「アイツラ……よくも……殺す……殺す!」 一人、逃げ出すように市街地を進むのは――〝柊かがみ〟だった存在。 もはや彼女(彼)をかがみと呼ぶ人間はいない。 確かに身体だけは柊かがみのモノだ。そして既に本物の【柊かがみ】は命を落としている。 彼女は既に死を向かえ、天へと旅立った。 柊かがみの贖罪の意志は、そのまま精神的な死として、鴇羽舞衣の攻撃をトリガーとして成就されていたのだ。 しかし――最大まで高まった不死の力は、舞衣のカグツチの劫火を持ってしてもその〝身体〟を滅する事は出来なかったのである。 いや、上手く頭部を破壊する事が出来なかった、というべきか。 少なからず躊躇いがあった舞衣では、全力で柊かがみの身体を焼き払う事は不可能だったのだ。 「危ねぇ……ま、これこそ普段の行いの良さだろうな。しかし、マズイな。もう少しで放送だ。 あそこの平屋でルルーシュ君に殺されてた清麿も放送で呼ばれるだろうし……」 〝柊かがみ〟だった存在――ここはあえて『狂人』という言葉を使おう。 狂人は奈緒達と接触する前に、十分にデイパックに道具を詰め、そして辺りを探索していた。 そしてそこで彼女(彼)は銃弾を受けて死んでいる高嶺清麿を発見した。 それはつい先刻、ルルーシュと出会った場所とかなり近い民家だった。 つまり、ルルーシュと遭遇した時点で到達していた結論――清麿はルルーシュに殺されている――を彼女(彼)自身の手で証明した形になる。 狂人の格好は完全に衣服を全て吹き飛ばされた素っ裸。 当然、彼女(彼)には羞恥の感情など存在しない訳だが。 カグツチの炎を喰らう寸前にデイパックや持っている道具を投げ捨てたため、彼は手ぶらだった。 唯一指に嵌めたままだったクラールヴィントは消滅してしまったため、新しい服を精製する事は出来ない。 「俺が死んでねぇ事がバレちまう……どうすりゃいい?」 「――簡単だよ」 「なっ――!?」 狂人が振り向こうとした瞬間――――刀のようなものが、彼女(彼)の頭部と胴体とを切り離した。 瞬間の斬撃。まさに瞬く間に行われた神業である。 「つまり、だね……ここで君が死ぬのが何もかも一番丸く収まるって事」 「お、お前は……!」 ドサッ、という生々しい鈍い音を立てて狂人の首が地面に落ちる。 この空間における、不死者の死の定義は『頭部の完全な破壊』だ。 それを防ぐべく、首の切断部から血がまるで触手のように伸びる――しかし、 「ダメダメ。もう昼だぜ? ゾンビは墓場に還る時間だと思わないかい? あとは……そうだな。君さ、『自分は絶対に死なない』とか思ったでしょ? 君みたいにラッドを馬鹿にした行動を取られるのはね……俺もちょっと頭に来るかな」 「ジ、ジン……ッ!! な、何故ここに……!?」 ジンの手にした夜刀神が血のラインと頭部が接触する前に、ソレを切り離す。 あの場にいた全ての人間の目を誤魔化して、逃げて来た筈の狂人は、驚愕に瞳を見開いた。 「そりゃあ俺ってばドロボウだし。墓場ドロボウ……いや、死体漁りとでも言った方がいいかな? ギルガメッシュ達は奈緒ちゃんのところ。俺ってば、薄情モノな訳。 だから一人だけ気付いたの。加えて低俗な盗人ですから……まぁ、宝を追ってたら他にもとんだご馳走にありつけたみたいだけどね」 ジンが、夜刀神の刃を狂人の頭部に向ける。 「や、やめろ! これは柊かがみの身体――」 「彼女は死んだよ。人の個を司るのは肉体なんかじゃない。高潔で気高い精神さ。 今、ここにいるのはかがみとラッドを侮辱するだけの存在さ。二人のためなら、俺は喜んで自分の手を赤く染める」 「や、やめろぉおお! やめてくれぇええええ!!」 「――じゃあね」 最後はまるで果実を叩き割るように。 幾多もの死と再生を繰り返した柊かがみの肉体は――この瞬間、完全にその機能を停止した。 「ゴメンね……君の身体をこんなにしてしまって。 と……女の子を素っ裸のままにさせておくのも忍びないし、一仕事始めますか。 清麿も……か。しかもルルーシュが……? ……どういう事だろう」 狂人の口からもたらされた高嶺清麿の死。 そしてその殺害者がルルーシュだという情報。 寝耳に水、という奴だ。少なくとも放送を聴けば清麿の安否を確かめる事は出来るが…… 「まあいいや、とりあえずその平屋ってのを探してみようか。 ギルガメッシュの相手は……スパイク達だけで大丈夫か心配だけれど」 生憎と、彼は全てを自分の眼で確かめてみないと気が済まない性質だった。 ジンは頂点に近い位置まで上り詰めた太陽を見つめながら頭を働かせる。 大切なモノを奪われてばかりのこの最悪のパーティを破壊するための――最強の一手を探して。 「HO! HO! HO! 曲芸師から狂言回し、舞台裏での黒子もやります大ドロボウ! かがみ、ラッド、奈緒……君達の星が見えるまでには一区切り付けたい所だけど」 【C-6/市街地/二日目/昼】 【ジン@王ドロボウJING】 [状態]:全身にダメージ(包帯と湿布で処置)、左足と額を負傷(縫合済)、全身に切り傷 、疲労(中) [装備]:夜刀神@王ドロボウJING(刃先が少し磨り減っている) [道具]:支給品一式x16(食料、水半日分消費、うち一つ食料なし、食料×5 消費/水入りペットボトル×2消費]) 予告状のメモ、鈴木めぐみの消防車の運転マニュアル@サイボーグクロちゃん、清麿メモ 、毒入りカプセル×1@金田一少年の事件簿 短剣 、瀬戸焼の文鎮@サイボーグクロちゃんx4 偽・螺旋剣@Fate/stay night 、ムラサーミァ(血糊で切れ味を喪失)&コチーテ@BACCANO バッカーノ! 超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5) 王の財宝@Fate/stay night、シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム オドラデクエンジン@王ドロボウJING、緑色の鉱石@天元突破グレンラガン 全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)、衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- サングラス@カウボーイビバップ、赤絵の具@王ドロボウJING マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!! 首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)、首輪(クアットロ) シガレットケースと葉巻(葉巻-1本)、ボイスレコーダー、防水性の紙×10、暗視双眼鏡 がらくた×3、柊かがみの靴、破れたチャイナ服、ずたずたの番長ルック(吐瀉物まみれ、殆ど裸)、ガンメンの設計図まとめ 壊れたローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 、ブラッディアイ(残量40%)@カウボーイビバップ [思考] 基本:螺旋王の居場所を消防車に乗って捜索し、バトル・ロワイアル自体を止めさせ、楽しいパーティに差し替える。 1:柊かがみの埋葬を済ませた後、民家へと向かう。ギルガメッシュ達との合流はその後。 2:ガッシュ、技術者を探し、清麿の研究に協力する。 3:ヨーコの死を無駄にしないためにも、殺し合いを止める。 4:マタタビ殺害事件の真相について考える。 5:ギルガメッシュを脱出者の有利になるよううまく誘導する。 [備考] ※清麿メモを通じて清麿の考察を知りました。 ※スパイクからルルーシュの能力に関する仮説を聞きました。何か起こるまで他言するつもりはありません。 ※スパイクからルルーシュ=ゼロという事を聞きました。今の所、他言するつもりはありません。 ※ルルーシュがマタタビ殺害事件の黒幕かどうかについては、あくまで可能性の一つだというスタンスです。 ※ドモンと情報交換しました。会場のループについても認識しています。 ※舞衣、ゆたかと情報交換を行いました。 ※クラールヴィント@リリカルなのはStrikerSはカグツチの炎に巻き込まれ消滅。 ※清麿を殺したのはルルーシュだと聞きました。 時系列順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅲ Next ガッシュと清麿 投下順に読む Back 柊かがみの憂鬱 Ⅲ Next ガッシュと清麿 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 柊かがみ 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ ギルガメッシュ 279 散り行く者への子守唄 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ スパイク・スピーゲル 279 散り行く者への子守唄 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 鴇羽舞衣 279 散り行く者への子守唄 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 小早川ゆたか 279 散り行く者への子守唄 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ 結城奈緒 275 柊かがみの憂鬱 Ⅲ ジン 276 未来の二つの顔
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みんなぽかんとしてた。そうよね、私も知らなかったものこんな病気・・ かがみ「この病気はまだ原因不明な病気で心室の収縮が悪くなって心臓が拡張しちゃうんだって 心不全、重い不整脈。脳梗塞まで引き起こす可能性があって、これっていう対処薬もないの それに私の心臓はもうかなり負担がかかってて・・」 こなた「嘘、嘘だよねかがみん?かがみんがそんな・・ダメだよかがみん!」 つかさ「お姉ちゃん、本気で言ってるの?いや、いやあ!」 みゆき「本当なんですか・・」 ハルヒ「ふじゃけんじゃないわよ!」 かがみ「・・ハルヒ」 ハルヒ「なんであんたがそんな・・許さないわよ!勝手にしん・・・」 その場がシーンとなった。ハルヒはその言葉をいいかけてやめた。ぎゅっと唇をかみしめて そんな中キョン君は何故か普通な顔をしていた。 ハルヒ「とにかく絶対治しなさいよ!また明日もくるからね」 そういうとハルヒは出て行った。こなたとつかさ、みゆきさんもつられて・・ 団長のいないSOS団だけが残った。 キョン「まあ何だかがみ、大丈夫だ」 かがみ「え?」 キョン「こっちには何だって出来ちゃうスーパーマンがいる。なぁ長門!何とかなるんだろ?」 長門「・・できない」 キョン「は?・・何でだ。病気を治すぐらいお前にとっちゃ朝飯前だろ」 長門「彼女に降りかかっている悪性情報が多すぎる。取り除くことは不可能」 キョン「・・どういうことだ?」 古泉「そうですね、あなたもご存じの通り彼女は元々この世界の人間じゃありません。 当然負荷が彼女にかかっていたわけです。それに加えて涼宮ハルヒの情報改竄能力。 それを彼女は受け止めていた。それによるひずみ・・とでも言えばいいでしょうか」 キョン「・・じゃあかがみはどうなるんだ」 古泉「このままですと・・死にます」 死ぬ・・私が・・この病気のことを聞いたとき覚悟はしてたけど、こうはっきり言われるとね その時ものスゴイ音がした。キョン君が古泉君の胸ぐらを掴んで壁に押しつけてた キョン「よくも、よくもそんな事がいえるな!しかも本人の前で。何考えてやがる!」 かがみ「キョン君やめて!」 古泉「く、では嘘でも教えて励ませといいたいんですか」 キョン「だからって言い方があるっつってんだ!・・そうだ朝比奈さん。過去に戻してください」 みくる「へ?」 キョン「過去にもどってかがみが病気にかかる前に対処するとか」 みくる「それは、出来ません。このことはもう・・規定事項なんです。かがみちゃんは・・」 キョン「じゃあ、じゃあどうしろっていうんだ!!」 私は朝比奈さん(大)の事を思い出してた。そう、そういう意味だったのね・・ キョン「まて、じゃあハルヒはどうなんだ!あいつはかがみが死ぬなんて事望んじゃいない あいつが望むならかがみの病気だって治るんじゃないのか」 古泉「言ったはずです。柊かがみは涼宮ハルヒの能力を相殺する。いくら彼女が望んでも 柊かがみにだけはその能力は発揮されない。皮肉な事です」 キョン「な・・じゃあ本当に打つ手がないっていうのか・・」 キョン君はその場に座り込んだ。キョン君がこんなに落ち込むのを初めてみた 私のために・・他人事みたいに聞いてたけど私の事なのよね。私は・・死ぬのね・・ でもそんな実感ないよ。だって昨日まで普通に生活してたじゃない。それがいきなり・・ キョン「かがみ。大丈夫だ!俺が絶対なんとかする。」 かがみ「キョン君・・」 キョン「絶対何か手はあるはずなんだ。だから諦めるなよ」 かがみ「ありがとう。キョン君」 そういってキョン君達は出て行った。そのあとお姉ちゃん達が来た。つかさも・・ みんな、泣いていた
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No.013 柊かがみ 冬服ver. (Kagami Hiiragi Winter Uniform Ver.) 「まともに始めなさいよ!」 情報 作品名 TVアニメ らき☆すた 価格 2,500円(税込) 発売日 2008年09月13日 商品全高 約135mm 付属品 表情:通常、笑顔 手首:×10(雑誌持ち手×2) 共通付属品(スタンド、スタンド用アーム、収納袋) その他:雑誌、シール(コンプティーク表紙) 写真 キャラクター概要 メイン4人組のツッコミ役で、柊家の三女。柊つかさは二卵性双生児の妹に当たる。 現実的かつシビアで他人にはやや厳しい反面、自分にはやや甘め(特にダイエット関連)。 寂しがりやな一面があり、4人の中で自分だけが違うクラスに配属されたことを不満がっている。 シューティングゲームやライトノベルが好きで、以外にアニメやゲームに関する知識が多く、 こなたと接するうちにオタク知識が増えつつあるが、本人はオタク扱いされるのを嫌っている。 商品解説 雑誌持ち手が付属。 雑誌は元が無地で付属のシールを貼ることが出来る。 シールは「コンプティーク」が二枚。 良い点 悪い点 注意点・不具合情報 関連商品 泉こなた 冬服ver. 泉こなた 夏服ver. 泉こなた コスプレver. 柊かがみ 夏服ver. 柊かがみ コスプレver. 柊つかさ 冬服ver. 柊つかさ 夏服ver. 高良みゆき 冬服ver. 高良みゆき 夏服ver. コメント 名前 コメント
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No.035 柊かがみ コスプレver. (Kagami Hiiragi Cosplay Ver.) 情報 作品名 らき☆すた OVA 価格 2,500円(税込) 発売日 2009年05月15日 商品全高 約135mm 付属品 表情:照れ顔、呆れ顔 手首:×10 共通付属品(スタンド、スタンド用アーム、収納袋) その他:ネギ×2 キャラクター概要 柊かがみの夢の中に登場した初音ミクのコスプレ姿。 商品解説 表情パーツは『らき☆すた」シリーズの他キャラクターとの付替可能 良い点 悪い点 注意点・不具合情報 関連商品 泉こなた 冬服ver. 泉こなた 夏服ver. 泉こなた コスプレver. 柊かがみ 冬服ver. 柊かがみ 夏服ver. 柊つかさ 冬服ver. 柊つかさ 夏服ver. 高良みゆき 冬服ver. 高良みゆき 夏服ver. コメント 名前 コメント